再会

一、

 蒸し暑い体育館の中をバスケットシューズの擦れる音が甲高く鳴き、ボールが床にぶつかりリズムよく跳ねる音が、体育館全体を震わせる。


 相手チームの隙をついて、鋭いパスが飛んできて僕の手にボールが渡る。


 そのまま床を蹴り宙へ浮かび、右手でボールを押すと、ボールは放物線を描き吸い込まれるようにリングに僅かに触れ、バスッとネットが擦れる音を立て床に落ちる。


「ナイスシュ!」


 チームメイトに背中を叩かれ、直ぐに相手の攻撃に備える為に後ろに下がって守りに入る。


 相手の速攻によるパスをカットしようと全身を伸ばし指先にボールが掠めた瞬間、後ろに大きく飛ばされる。


 床に肩がぶつかり、その衝撃で自分が倒れたことを知る。


 鋭くホイッスルが響き審判から相手にファールが宣告される。


 チャンスを逃すまいと素早く立ち上がろうとするが右の足首に激痛が走り、歩くのがやっとな僕の今日の出番はここで終了となってしまう。


 ***


咸峰みなみね、足痛むか?」


 氷嚢ひょうのうで足を冷やす僕に声を掛けてきたのは部活の顧問の中澤直哉なかざわなおや先生。高校一年のときの担任で爽やかな笑顔が印象的な、イケメンである。


 バスケットが大好きで、国体にも出たことがある実力の持ち主だ。小学生のころからバスケットをやっている僕にとって尊敬できる先生だ。


「はい、時々ピキッと痛みが走ります。けどだいぶん痛みも引いてきましたし、いけそうです」


「う~ん、けっこう激しい当たりだったし、無理はしない方がいい。次の試合は様子みような」


「……はい」


 正直試合に出たかった僕の返事は歯切れが悪い。それを感じ取ったのか中澤先生は僕の頭をクシャクシャと乱暴に撫でると、イケメンなスマイルを見せて親指を立てる。


「咸峰、さっきのいいシュートだった。豪快なシュートもカッコいいけど、技ありって感じのあれは鳥肌たったぞ!」


 そう言って肩をポンポンと叩いて他のチームメイトの元へ指示を出しに行く。


 僕は中澤先生に撫でらてぐしゃぐしゃになった髪に居心地の悪さを感じながらも、同時に喜びを噛みしめていた。

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