げんき組の

 ゴールデンウィークに入った。連休の間隙の登校日、僕と鶴翔かくしょうさんは沢辺さわべ先生に呼ばれた。沢辺先生の表情はいつもと変わりなく、話の内容は深刻なものでもなさそうだった。

「クラスの様子はどうかな?」沢辺先生は僕たちに訊いた。職員室隣の面談室。昼休みだった。

「みんな元気にやっています」鶴翔さんが答えた。まるで年賀状のやりとりだ。しかしそれが沢辺先生を安心させるのだ。

「良かったわ。数学の宿題が減ったと聞いたときにはどうなることかと思ったけれど、勉強会を開いたりしてかえって結束が固くなったのね」

「ええ、そうです。生出おいで君のお蔭です」勉強会は僕の方がずっと関わり合ってきたので、鶴翔さんは僕を讃えたのだ。

「そうね、でも鶴翔さんがクラスをまとめているからうまくいったのよ」

「とんでもない……」

 まあ僕はいつでも裏方なので褒められなくてもかまわない。宿題が減っても勉強を頑張ろうとみんなに言ったりできるのも鶴翔さんだからだ。彼女の言うことならみんなも耳を貸す。僕みたいなサンピンには無理な話だ。

「うちのクラスは元気な子が多いから元気な子ばかりが目立つけれど、おとなしい子もいるわ。その子達にも配慮してあげてね」

「そろそろ声掛けをしていこうと思っています」と鶴翔さんは答えた。

「そうね、でもあまり無理なことはしないでね」

「大丈夫です」鶴翔さんは自信に満ちた表情で答えた。「このクラスに孤立する生徒は一人たりともつくりません」

「頼もしいわねえ」沢辺先生は笑った。このノリが僕を不安にさせた。いや、無理にボッチに余計なお世話をしなくても。

「あの、私、部活連の会合があるので、もし重要な案件がなければこれにて失礼させていただきたいのですが」

「ええ、良いわよ、いつも大変ね」

「ありがとうございます」鶴翔さんは頭を下げて忙しそうに去っていった。

「ほんと、鶴翔さんはいつも忙しいわね」沢辺先生はニコニコしながら僕を振り返った。

「そうですね」と僕は相槌を打つしかなかった。

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