忙しい!
午後の五時限目と六時限目の間の休み時間、
基本的に僕は休憩時間トイレに行く以外動かない。だから学級委員同士でイレギュラーな話し合いをするときは鶴翔さんが僕のところに来るのだ。
「ごめんね、
スーパーガールの彼女が僕みたいな地味男に頭を下げると非常に目立つ。まわりの奴らが、いったい何様だと睨むような視線を僕に送っているように僕は感じた。単なる被害妄想かもしれない。
「三日ほどボランティアで留守にするから……」と鶴翔さんはその日
本当は沢辺先生よりも先に僕に伝えたかったはずだ。しかし鶴翔さんはとても忙しい。僕のところにたどり着くまでに幾多もの責務をこなしていたに違いなかった。
「ああ、それなら沢辺先生にも言われたので、今、テンプレ資料を集めているところなんだ」僕はできる男をちょっと見せつけたいと思っていた。「こんな感じだけど」
僕はあちこちから集めた過去のテンプレ資料に修正点を書き込んだものを鶴翔さんに見せた。
どんなもんだい、僕だってこれくらいはやる男なんだよ。その時の僕はさぞや無様なドヤ顔になっていたことだろう。
「さすが生出くん」鶴翔さんはいつもの輝くような笑顔を見せた。
文武両道を地で行く鶴翔さんはとにかく健康的な美少女だ。色白華奢な美少女とは対極に位置する。今はそうでもないが夏に近づくと小麦色の肌になる。夏の真っ白な半袖セーラー服を着た鶴翔さんは二の腕もムチムチしていて、豊かな胸と、女性らしい腰まわりを繋ぐウエストが引き締まっていて、まさにボンキュッボンだ。
体を常に鍛えているから、手首、足首、膝など節々が細く引き締まっていて、短めのスカートから細い膝、そして下腿のしなやかなラインが見えて絶妙の美脚を作っていた。
その姿が目に焼き付いた僕の脳裡には今も夏服姿の鶴翔さんがいる。
そんなことを考えていい気になっていたら、現在の鶴翔さんが申し訳なさそうに言った。「生出君、私は従来にとらわれないものにしたいの。できるだけ無駄を廃して、有意義な討論ができる資料にしたい。去年までのものは前年の資料に手を加えて修正を繰り返したから、何だかいびつなものになってしまっているわ。私はそれが我慢できない。もっとすっきりとした、スマートなものにしたいの」
僕の耳には最後の「……したいの」だけが残った。
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