とても
新学期が始まって二週間ほどたっただろうか。僕のクラスは「二年げんき組」と呼ばれ始めた。呼び名が広がっているのはもちろん名付け親の
沢辺先生は女子体育の先生で、女子に人気があった。一方、僕たち男子生徒が沢辺先生と関わることはまずない。沢辺先生の授業を受けたこともないのだ。
僕たちが一年生の頃、沢辺先生は一年H組の副担任をしていたから、その時H組にいた男子しか沢辺先生と口を利いた男子はいなかったはずだ。
それが「げんき組」の男子学級委員になったお蔭で、僕は沢辺先生によく呼び出されるようになった。といって呼び出されて連れていかれるのはいつも階段の踊り場だった。
「
体育の授業がない日の沢辺先生は、たいてい膝丈のスーツ姿だ。童顔美少女だから実年齢よりもずっと若く見える。学生のリクルート姿に見えなくもない。しかし喋り出すとやはり沢辺先生だった。大袈裟な身振り手振りが加わり、ボリューミーな体が揺れる。
「金曜日から一年生の研修会があって、毎年二年生が三十名ほどボランティアで参加するんだけど……」僕にも行けと言うのかと思っていたら「
「わかりました」良いですよ、ってな感じで僕は安易に返事をした。
一年生の研修会は金曜日から二泊三日だから実質的には授業があるのは金曜日だけだ。土曜日は選択科目の演習があるものの、受講者しか登校してこないし、教室にクラス全員が集まることもなかった。学級委員の出番はない。
「それでね」と沢辺先生はわざとらしく目をキラキラさせて僕を見つめた。「来週のホームルームの資料を作ってもらいたいのよ」
「え、何か資料にするほどの議題ってありましたっけ? まだ今年度は始まったばかりで、体育祭、文化祭、修学旅行は二学期ですよね? あ、球技大会が五月でしたか」
「そう、そういった年間行事の予定表作成と実行委員の選出及び活動内容の叩き台を作ってほしいの」
「そういうのって、毎年のことだからテンプレみたいなのがあって、ちょっと書き換える程度ですよね?」
「うん、だから簡単だと思うから、鶴翔さんがいない間にお願いね。来週頭にでも鶴翔さんを交えて三人で仕上げるつもりだから」
「わかりました」と僕は答えた。
「さすがね。頼りにしてるわ、元気くん」
沢辺先生はニコニコしながらこちらに顔を向ける
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