第13話 祖母と同じ神力(ちから)
全ての力を使い果たし、気を失ってしまった少年。身体はもうボロボロで、立っているのもやっとのようだった。美果子は心配するあまり、顔を曇らせた。
「そんな顔をしなくとも、大丈夫だよ」
美果子の心情を見透かしたらしい。穏やかに微笑みながら、ミカエル様がやおら口を開く。
「気を失っているが、命に別状はない。一時的に、黒猫の姿に変わってしまったが、体力が回復すれば元の姿に戻る。念のため、私が
ミカエル様の言葉を聞き、美果子はほっと安堵した。
「私……軍服を着た男の子の姿なんて、一度も見たことありませんでした」
「清華が悪魔と戦闘中、君の力はまだ、目覚めてはいなかったからね」
「私の……力?」
「君には、生まれ持った、強い神力がある。その力が目覚めたことにより、軍服姿の少年が見えるようになったのだ」
「それは、どういう……」
「君の祖母、マリアンヌと同じだよ。孫娘に当たる君にも、彼女と同じ
そうそう……悪魔を浄化する際、清華の身体を
彼女も気を失っているだけで、命に別状はない故、時期に目を覚ますだろう」
今日、ここで起きたことは他言無用だ。神力も、私がいいと言うまで、絶対に使ってはいけないよ。今まで通り、神力や悪魔と無縁の生活を送るのだ。
時が満ちるまで、現状維持すること。五年後の今日、また会おう。そう言い残し、ミカエル様は美果子の前から去って行った。
美果子は思い出した。五年前の、あの出来事を。強力な神力を生まれ持っていることを。そんな大事なことを、どうして今まで忘れていたのだろう。
答えは単純明快だ。去り際、ミカエル様が美果子に口止めをしたから。ずっと覚えていると、いつかどこかで秘密を
ミカエル様との約束を守るため、熟考した末、美果子は『忘れる努力』をしたのである。
その結果、ミカエル様との出会いから、廃墟ビルでの出来事の部分だけが記憶から抜け落ちてしまったのだ。
あれから五年後の今日。美果子は、ジャンヌ・ダルクとクリスティーヌ・ジュレスが見守る聖堂で、ミカエル様との再会を果たしたす。それも偶然に。これには驚かずにはいられない。
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