第14話 華麗なる変身
「ミカエル様……お久しぶりです!」
敬重する神の仕いとの思いがけない再会に、緊張した美果子はぎこちなく返事をした。
「五年もの間、よく現状維持してくれたね」
静かに微笑み、口を開いたミカエル様は、
「時は満ちた。美果子よ、力を貸しておくれ」
良く通る、澄んだ声で協力を要請した。
ミカエル様の指示で、差し出された手にそっと手を重ね、美果子は目を閉じた。
ゆっくりと心の中で五秒間数え、そっと目を開けてみる。そこは、草木が生い茂る、薄暗い丘だった。
ここは……前に、来たことがある。
四階建ての、廃墟ビルの前で佇み、見上げた美果子の脳裏に、五年前の記憶が蘇る。
美果子はここで初めて、神力を使ったのだ。そして美果子の神力に触れ、廃墟ビルに蔓延る悪魔が表面化し、ミカエル様が浄化した。
その光景は、五年が経った今でも、昨日のことのように鮮明に覚えている。
生まれ持った神力で、悪魔と対戦……なんてこともあり得る。不気味に静まり返る丘の上で、美果子は恐怖と戦った。
「お婆ちゃん……私に、力を貸して」
首にぶら下げている、金の十字架を握りしめ、勇気を奮い起こす。次の瞬間。
「な、なに……なんなの?!」
十字架から金色のまぶしい光が走り、瞬く間に美果子の全身を包み込む。パンッと音を立てて金色の光が弾けて消えた。
美果子が、白い翼の髪飾りとリボンでポニーテールにした黄土色の髪と、深紅のワンピースを着た姿に。
光り輝く銀色の糸が全身を包み、銀白色のワンピースにフード付のマントとなって美果子に着せ、ふくらはぎが隠れるくらいのロングブーツを履かせた。
光り輝く青い糸がマントを縁取り、金色の糸が両耳に十字架のイヤリングを、ブーツにも同じ形のワンポイントアクセサリーをつけ、銀白色のワンピースを、美麗な刺繍で以て縁取って行く。
最後に白い手袋をはめた両手を、光り輝く糸で以て金色のリボン(丸い形をした赤い宝石が真ん中にはまっている)に仕上げ、立体的な布製のリボンに変化したところで、美果子はゆっくりとまぶたを開けた。
「これは……どうなっているの?」
まるで、魔法少女のように変身した美果子。微塵も予期していなかった事態に、美果子はどうしていいのか分からず、放心状態と化す。
なにかが壁に叩き付けられたような物音が、廃墟ビルの裏側で聞こえた。はっと我に返った。なんとなく、嫌な予感がする。両手で頬を叩き、勇気を奮い起こした美果子は、廃墟ビルの裏手へと急いだ。
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