第10話 神崎清華の危機

「次は私が、お相手してさしあげますよ」

 男が、そう言うのが聞こえた。男の声を合図に、対峙する神崎清華が身構える。

 対峙すること数秒。まず動いたのは、まるで貴族のような気品感漂う男の方だった。

 機敏な動きで以て男が突進。あっという間に神崎清華に接近し、結界を一刀両断。剣の刃に触れたところから結界が解けてなくなってしまった。

 あと数センチずれていたなら、確実に神崎清華の命はなかっただろう。幸いにも、結界を破られ、目を丸くした神崎清華は傷ひとつつかず、無事だった。

「先程の魔物モンスターよりも強い私は、あなたが到底、太刀打ちできる相手ではありません」

 剣を鞘に収め、左腰にげながら、真顔でそう告げた男は

「この手で、あなたを闇へ葬ってさしあげましょう」

 残酷に言い放つと手をかざし、神崎清華へ向けて赤い光線を撃ち放った。手持ちの剣で防ぐにしても間に合わない。もうダメだと神崎清華が目をつぶる。すると……

 金色に光り輝く十字架が神崎清華の目の前に出現。それが盾の役目を果たし、赤い光線から防御するも、みるみる亀裂が入って砕け散り、神崎清華に直撃。赤い光線を受けて、神崎清華が倒れてしまった。

「神力を発動させて盾をつくり、光線の威力を半減させるとは……ですが、これでもう、あなたには悪魔を封じる力すら、残っていませんね。これで用は済みました。後は……あの中にいる悪魔達に任せましょう」

 冷笑を浮かべて言い放った男。自力で以て神崎清華を四階建ての、廃墟ビルの中へ閉じ込めてしまった。

「私の強力な闇の魔力を受けて、神崎清華は相当弱っています。そんな状態で無数の強力な悪魔を相手にするのは、至難でしょう。さようなら、神に愛された神仕かみつかい」

 まるで氷のような、冷ややかな笑みを浮かべて、マントを翻した男はシュッとその場から姿を消した。

 先ほどの魔物モンスターもそうだったのだが、悪魔らしきあの男も、美果子とミカエルの姿がまったく見えていないようだった。

 悪魔と戦闘中だった神崎清華とはさほど離れていない距離で見守っていたと言うのに。

 それどころか、神崎清華自身も、二人の姿が見えていないようだった。これは一体……

 美果子が訝っていると、その心情を察したミカエルが徐に口を開く。

「私の結界は、マジックミラーのようになっていてね。結界の外からでは、なんの変哲もない風景に見えるのだよ」

 つまりは、ミカエルが結界を張っている間中、魔物モンスターを含む、結界の外側にいる人間には、結界の中にいる二人の姿だけが見えなくなる。という仕組みらしい。なるほどね。

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