第8話 神崎清華VSモンスターⅠ
そんな筈はない。少しずつ、冷静さを取り戻す美果子は疑問視する。
この人はふざけているんだ。そうに、違いない。
「私の言ったことが、信じられないようだね」
美果子の心を見透かしたミカエルが、静かに口を開く。
「いいだろう。今すぐ、私の身の潔白を証明してみせよう」
微笑んだミカエルはそう言うと、徐に立ち上がった。
「私に、ついて来なさい」
……ついて行って、いいの?
身体の向きを変え、聖堂の、正面玄関へと歩を進めるミカエルの背中を見詰めた美果子は、ついて行くべきか否か判断に迷った。
あれこれ悩んだ末、美果子は最大級の警戒心を胸に、ミカエルの後をついて行った。
西の空に傾いている夕日の色が徐々に赤くなっていく。まるで、先を行く相手を追尾するかのように、時たま電柱やコンクリート塀に身を隠したりなどして、美果子は相手の出方を
一定の距離を保ち、美果子が不審な行動を取っているのに、それを知ってか知らずか、黙々と歩を進めるミカエルは一度も振り向かなかった。
不思議なことに、ミカエルについて歩く道中、誰ひとりとしてすれ違う人はいなかった。
もともと、人通りの少ない閑静な住宅街なので、通行人とすれ違うこと自体、少ないのだが。
聖堂から出て三十分くらい経った頃。先を行くミカエルの足がぴたりと止まった。
そこは、草木が生い茂る、薄暗い丘だった。海ヶ丘高校の制服を着た神崎清華が、ミカエルと美果子が足を止めるその視線の先に佇んでいる。
丸い形をした赤い宝石が真ん中にはまる、金色の十字架の剣を右手に携え、凜然と佇む神崎清華の後ろ姿。更に奥へ視線を向けてみると……
尖った耳に頭には二本の角、背中にコウモリのような黒い翼を生やした
悪魔だ。ミカエルの背中越しから、
「心配することはない」
徐に振り向いたミカエルが、
「清華を信じて。彼女ならきっと、魔物を退治してくれる。それに……万一の時は、私が君を
優しく微笑みながら美果子を励まし、そう告げて約束した。
この人は、私が思っているよりも……いい人なのかもしれない。ほんのり頬を赤く染めて、美果子は内心そう思ったのだった。
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