第9話 その他クラスメートたちの声

「さっき泣いていたよね、赤波江さん……」

「ずっと許されないのが、よっぽど悲しかったんだよー」

「もうさぁ、一体どれくらいやってんのよ? 赤波江さんたちのいざこざって……」

「あっ、一ヶ月らしいよぉ」

「ゲッ! マジかよ、一ヶ月もやってんの! さすがに長くね?」

「おいおい……よく疲れないよなー、あいつら。まあ赤波江さんは、めちゃめちゃ疲れているんだろうけど」

「ってか、そういうのって飽きないもんなのかしらねー」

「いやいや……ケンカは飽きるとか飽きないとか、そういう問題ではないんじゃないのー?」

「それにしても、一ヶ月も友達を許していないとはな……。あいつらに、どれだけのことをしたんだよ赤波江さん……」

「でも赤波江さんって、そんな子には思えないよねー」

「そうだよね。赤波江さんは、優しい子だもんねぇ」

「うんうん。赤波江さんは、良い子じゃん」

「とりあえず……チャチャとコムちゃんの二人が、何とかしてくれそうでホッとしたわー」

「私らも結構、赤波江さんのこと心配だったけどさぁ……。なかなか勇気が出なかったよね~」

「うん。赤波江さんの味方をするってことイコール……あの人たちに逆らうってことになるかもしれないからね……」

「やっぱり……おっかねーよな、あいつら」

「あいつらのことを苦手に感じているのは、オレたち男子だけかと思っていたけど……」

「実は女子からも、怖がられていたんだな……」

「そりゃそうよー。あの四人グループで、まともに話せるのって……赤波江さんしかいないと思うよ?」

「だよなー。赤波江さんは、まとも!」

「僕も赤波江さん、親切だと思う」

「かわいそうだよね、あんな人たちといるの」

「ねー。よくずっと、一緒にいられるよ!」

「あーあ! マジで嫌いだぜ、あいつら!」

「あたし……緑川さんって嫌いだな。ワガママでムカつくの」

「うんうん! だよねっ!」

「オレもオレも!」

「あー、あんた隣の席になったとき……かなり緑川さんに嫌な顔をされていたっけ?」

「そうそう! あれ超キツかったなー。何も悪いこと、していないのに……」

「八つ当たりじゃないのかな? あのときは本当に散々だったね……」

「私は緑川さんもだけど、もっと苦手なのは青森さんかなぁ……」

「あー、分かるなぁそれ! あたしも青森さん、マジ無理!」

「僕も嫌いだよ、あの人……」

「性格、超キツいよね……」

「言葉遣いも、いちいち汚くて嫌!」

「そうだよね! 関わりたくないし、会話したくない!」

「あいつ、すっげぇ口が悪いよなぁ」

「なーんか緑川さんの右腕感を出しているのも、見ていて気分が悪い……」

「あー、あの行き過ぎた第三者みたいなね……」

「この子がいれば私はそれだけで良いって感じがムカつくよね。ウザい」

「緑川さんと話しているとさ、すごい睨んでくるよねぇ青森さん。こっちは仕方なく話しているのに」

「うん。下手なこと言っちゃったら、何されるか分からなくってドキドキするよね……」

「ひょっとしたら青森が、一番怖いのかもしれないな」

「そうだよな。オレは前にさぁ、ちょっと青森に意見を言ったら『何だよ!』とか返されてビビったわ~。それくらいで怒鳴る奴なんて、いるのかよ?」

「すごい短気だね……。自分が好きだと思っている人以外は、どうでもいーじゃんって感じがするよ青森さんは……」

「僕は青森さんに、ビンタされたことあるよ。おっかなかったし痛かった……」

「うわマジ?」

「こえ~……。オレは青森に、すげぇ力で背中を蹴られたことがあったぜ」

「うわぁ、それも怖いよね……」

「私は『どけよ、邪魔!』って言われて、突き飛ばされたことがあった! そのときに私、青森さんが感じ悪いっていうことを知ったのよね!」

「おい、あいつ女子にも容赦ねーのかよ。でも赤波江さんって……そういうのオレたち以上に、やられていそうだよな……」

「そんなんじゃ、身が持たないよね……。本当に気の毒だわ、赤波江さん……」

「確かに青森も怖いけどさ……黄瀬も、なかなか怖くねーか?」

「あー、黄瀬さんって不気味だよな……」

「ケンカの仲裁をするどころか……黄瀬さん、ケンカを見て楽しんでいない?」

「やっぱり、そう思うよな~。自分の友達がケンカしているのに、どうして仲直りさせようと動かないのかが気になった」

「あれは確実に、おもしろがっているよね。赤波江さんの謝罪、おちょくっているのを何回か見たことがあるから分かるよ……」

「っつーかコウモリかよ、あいつ」

「やれやれ。鳥なんだか、ネズミなんだか……」

「ねー。赤波江さんの味方をしているようで、あの二人の元に結局は行っちゃうんだから」

「どっちにも良い顔しているみたいだけど……あたしらには、もうバレバレだよねー」

「黄瀬の奴、気分が良いんだろうなぁ~。自分はケンカしている友達を見守るだけの人間だっていうのが」

「あの笑顔から、ゲスな感じが滲み出ちゃっているんだろうねー」

「お気楽な妹的存在に見えて、実は腹黒いってことだな……」

「うわぁ、やっべーな!」

「意地悪な二人に責められている赤波江さんの側にいる優しい子に見えて、実は揉め事を楽しんでいるのかよ……」

「ってかさー、マジで赤波江さんって何で二人に怒られてんだろーね?」

「いやいや、だからさぁ……。赤波江さんみたいな良い子が悪いことをするのは、全く考えられないって!」

「その良いところがムカついて、あいつらが勝手にプリプリしていることも考えられるよ!」

「ああーっ! そっちのパターンかぁ!」

「そうそう。あと単なる嫌がらせとかね」

「ひょっとして、八つ当たりとか?」

「まさか……というか、やっぱりだな! 本当に悪いのは、緑川と青森なんだろ?」

「それか黄瀬が色々やって、ゴチャゴチャしていたりしてー!」

「ひゃー! 女子こっえー!」

「ちょっと、あんたたち! 男女差別するな!」

「へっ?」

「そういう男子たちだって、あたしたちとこういう話で盛り上がっているじゃんかよー!」

「う……それは確かにな……」

「あなたたち男子なのに……これじゃあ井戸端会議の、おばさんじゃないのよ!」

「す、すみません……」

「やれやれ……まっ、そういう素直なところは良いと思うんだけどね~」

「うおっ、どしたどしたっ?」

「急にツンデレかよー」

「違うよ、んもうっ!」

「……こうして私たちが、お気楽に騒いでいる間もさぁ……」

「お、お気楽って……」

「何よ~、急に失礼ね!」

「でも、そうじゃない? 赤波江さんは、一人で大変そうだったもの」

「そ、それもそうだよね……」

「二対一、か……。つらいよなぁ」

「黄瀬は側にいても、ただただ笑っているだけだしね」

「あれは仲間外れみたいなものよ」

「みたい、というか……露骨な仲間外れだったよな!」

「四人でいても、楽しいのは三人。仲間外れバレバレ!」

「でも、すごいことを考えちゃったわよね~あの三人!」

「うん。赤波江さんを、一人にさせないように見せて……孤立させているの」

「赤波江さんを逃げられないようにしていたとか、すげぇおっかねーよ!」

「どうして、そんなときばっか頭が良くなるんだか……」

「でも……ようやく赤波江さん、あの三人から解放されるみたいで良かったよねマジで」

「優しい小紫さんと茶園さんが無事であることを、僕は祈るよ。赤波江さんもね」

「あたしは、こんな話をしているだけじゃなくって……ちゃんと赤波江さんの力になりたいよ」

「それはオレもだっ! やっぱりカッコ悪いもんなー!」

「私たちも、これから赤波江さんを助けようよ」

「うんうん!」

「頑張ろうね」

「もちろんだ!」

「見てろよ~。緑川! 青森! 黄瀬!」

「でも、やり過ぎないように!」

「……はーい……」

「そうだね。そこは気を付けよっと……」

「っつーか、さっき聞いちゃったんだけどさぁ」

「え、何?」

「もしかしたら赤波江さん、また近々……」

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