第18話 トレーニングするよお兄ちゃん
サッカーをしたいのか俺。
思いながら夜中になって天井を見上げる。
天井なんか見上げても仕方が無いのだが.....癖になっているなこれ。
思いながら俺はそのまま後頭部に手を添えて天井を見上げたまま溜息を吐く。
そして.....懐かしい記憶と。
その事とは違う恐ろしい記憶を思い出す。
事故の瞬間の記憶を、だ。
「.....思い出して.....何になるんだろうな.....」
考えながら.....俺は目を閉じる。
そしてゆっくり睡眠を取ろうと思ったのだが。
何だか眠れない気がする。
しかし時刻は1時間経過していた.....!?
「.....!?」
何故か横に凪帆が寝ていた。
俺はビックリしながら目を覚ます。
そしてその姿を目に入れる。
やはり相当に可憐な美少女だな、と思う様な顔をしている。
俺はその姿を柔和に見ながらも。
何故コイツはここにいるんだ、と考えてしまう。
「.....ったく」
俺は後頭部を掻きながら凪帆を見つめる。
スースーと寝息を立てながら.....横顔を見せている凪帆。
そんな姿にまた溜息が出る。
でもまあ.....仕方が無いよな.....。
まだ20歳になってないしな。
「.....しかしな.....困るなこれ.....近距離だし.....」
「スースー.....」
俺は思いながら.....凪帆を見る。
凪帆は本当に安心している様な顔を浮かべながら寝ている。
その顔を見ながら.....俺は何か思い出しそうに.....なる。
そして俺はハッとして思い出した。
何を思い出したか、というと.....そうだ。
アイツも.....そうだったな、と。
会う事は無いとは思うけど。
「何か懐かしい記憶だな.....。アイツも.....俺に言っていたよな。.....サッカーを.....続けろって」
飯島遠矢(いいじまとおや)。
俺とはサッカーで顔を会わせるだけでそんなに会話をしていないけど。
そして.....話したのは10日だけだった。
だけど俺が.....遠矢を気に掛けているのは知っていたから。
負傷した俺に最後にこう言ったのだ。
「サッカーを続けた方が良い」
と。
俺は考えながら顎に手を添える。
そして天井を見上げた。
サッカーを続ける、か.....。
全くどいつもこいつも俺にそんな期待しても意味無いっての。
思いつつも嬉しい気持ちで.....俺は。
サッカーを教える算段を考えた。
その時である。
凪帆が、ううん、と言いながら目を覚ました。
「あれ?あさ.....じゃ無いよね?」
「.....お前さん。.....目を覚ましたのは良いが何をやっているのかな?」
「私?.....見て分かる様にお兄ちゃんと一緒に寝ているね」
「.....いや.....そんなもんは見れば分かるが.....何故一緒に寝ているのかと聞いている」
「私はお兄ちゃんが好きだから。だからこうしているの」
えへへ、と微笑みながら俺を見てくる凪帆。
俺は赤面しながらその顔を見る。
吐息もかかるレベルであるのだが.....。
非常に困るなこれ.....。
思いながら俺は凪帆を見る。
「.....でもお兄ちゃんが困る行動はしないけどね」
「.....いや。しているけどな。.....何を言っているんだお前は」
「違う違う。そう言う意味じゃないよ。.....例えば好き好きで本気で襲ったりしないよ、という意味でね。.....お兄ちゃんの事は本気で好きだけど」
「.....成程な。.....まあそう言われたら.....ってなる訳無いだろ。ヤバいだろこれ以上って」
「あらあら。お兄ちゃん。私はもう大人ですよ?」
「な訳無いだろクソガキ」
俺はキスでも交わせそうなぐらいの距離で眉を顰めながら怒る。
それから盛大に溜息を吐いた。
そして、もう寝るぞ、と言い放つ。
凪帆は笑顔で、うん。そうだね、と頷く。
そうしてからそのまま眠ろうとした。
「ねえ。お兄ちゃん」
「.....何だ」
「.....サッカーしていたら.....お兄ちゃんは将来は変わったのかな」
「.....それは無いな。俺は根性無いしな。変わらないだろうな」
「.....そうなのかな。でもお兄ちゃんだから」
「無い無い」
そうして俺は反対側を向いた。
それから.....そのまま目を閉じて寝る。
すると.....反対側から寝息が聞こえてきた。
俺はその事に納得しながら寝る。
「言うて.....寝れんなこれ.....」
女子が後ろって。
ますます寝れなくなった。
困ったもんだな、と思いながらも俺は少しだけ経ってから。
そのまま寝てしまった様だ。
翌朝になったのである。
☆
「お兄ちゃん。お早う」
「.....お前な.....まだ午前8時じゃないか.....」
「早寝早起き。これ大切だよ。お兄ちゃん。.....だから早く起きてね」
「.....そんな無茶苦茶な。.....寝かせろ」
「もー。怠慢だね。じゃあ後5分。.....朝食冷めちゃう」
ああもう.....。
これってどっかの幼馴染夫婦の会話の様だな。
新婚の、である。
勘弁してくれ.....俺はそんなつもりは無いしな。
思いながら俺は眠りから覚めた。
「お兄ちゃん。お早う」
「.....はいはい。.....んで。何のご用事ですかな」
「もー。今日は旅行に行く為のグッズを買うよ。お兄ちゃん」
「.....早すぎだろ。.....何でだよ」
「良いから。お兄ちゃん.....休肝日も大切だよ?」
確かにそうだな。
俺は思いながら盛大にアクビをしながら。
そのまま動き出す。
全てはサッカーの為と思えば。
少しは身体が動けそうだ。
コイツに振り回されてならないが.....。
「そう言えばお兄ちゃん」
「.....何だ今度は」
「.....私が小さかった時の記憶は.....それなりにある?」
「.....結婚とかの件だよな。.....それ以外に何かあるのか」
「うん。.....私を救ってくれた話」
「.....ああ.....そう言えばお前.....引き篭もっていたよな?イジメだっけか?学校に行きたく無いって」
そうそう。
8歳だったけどね。
と言いながら俺にニコニコする。
コイツ内気だったもんな.....真面目に。
懐かしいもんだ。
俺達が.....初めて出会った頃は.....だ。
「私はだから2回救われた計算だね」
「.....まあ確かにな。.....そうなるわ」
「明菜さんよりも上だね。えっへん」
「.....それは.....まあ.....うん.....」
本当に残念だったな.....凪帆。
実はアイツも2回救われたって話をしているぞ。
お前ほどじゃ無いかもだけど。
思いながら胸を張る大きいバストを見つつ赤面で横を向きながら考えた。
「取り敢えずはついでに小学校に行きたいなって思って。私の」
「.....?.....行ってどうするんだ」
「思い付きだけどお兄ちゃんのやる気を引き立たせる為にサッカーするの」
「.....馬鹿かお前は.....入れないだろ」
「バレたら逃げれば良いし」
「お前な.....」
建造物侵入だろ。
良い加減にしろ、と思いながらチョップをかました。
すると、じゃあ近所の公園.....、とシオシオしながらボソッと言う。
まあそれぐらいなら良いか。
「.....何で俺のサッカーにそんなに.....」
「まあまあ。当日用のストレッチぐらいだよ。お兄ちゃん」
「.....意味が分からない.....」
当日で良いだろ.....。
面倒だな、と思いつつも。
まあコイツの為に一肌脱いでも良いかもな、と思った。
期待しているんだし。
恩返しぐらいはしないとな.....。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます