第17話 凪帆と元輝と色々と

俺はかつてだが.....うん。

サッカーを10年間ずっとしていた。

だけど事故に遭ってからは.....そんなサッカーから。

それからコートからも全て遠ざかった。


実は足は怪我したがサッカー自体は続けようと思えば続けれたのだ。

だけど、良いかなもう、的な感じで遠ざかったのだが。

凪帆に指摘されて気付いた。

ああそうか。


俺はサッカーしたいんだなって。


確実に言い訳だけで遠ざけていたのだ。

サッカーを、だ。

何故かというと俺はサッカー自体はしたいとは思っていたが。

だけど周りが幸せなら良いかな、って思った。

サッカーがやりたい事を胸に仕舞い込んだのだ。

先ずサッカーをやりたいのは事実だが今が大切だからと後回しにしていたのだ。

そのせいで全てが後回しになってしまった。

俺はそのせいで酒に無意識に走っていたのだと思うよ、と。

凪帆は俺に言ってきた。


ああそうか。

俺は久々に恐れている理由は。

きっと.....サッカーをする事によって何かが消えたり壊れたり傷付いたりしないかと。

恐れているんだ、と。

そう思えた気がしたのだ。


お兄ちゃん貴方自身の意見が聞きたい。

そう凪帆は言ってきたのだ。

俺は衝撃を受けた。


自身が何をしたいのか。

全て胸の奥に閉まって押し殺していたんだと。

思い知らされた。

だからメチャクチャに酒とかエロ本に走っていたんだと。

その様に思えた。



「お兄ちゃん」


「何だ?」


「お風呂沸いたよ。一緒に入ろう」


「だから良い加減にしろよ。俺は入らない!」


後から入るから取り敢えず先に入れ、と言いながら仕事をする俺。

凪帆は、ぶー。ケチ、と言いながら風呂に向かった様だ。

全くあのアホは。

これだから困るんだよな。


「お兄ちゃん」


「何だよ!」


「お兄ちゃんのやりたい事が聞けたの嬉しかったよ。有難うね。お兄ちゃん」


「.....!.....いきなり言うな。恥ずかしい」


「アハハ。お兄ちゃん恥ずかしがり屋ー」


「良い加減にしろよお前.....早く入らないと脱がすぞその服」


「別にお兄ちゃんなら大丈夫だよ?」


大丈夫なわけあるか。

早く入って来い、と俺は言う。

はいはい、と言いながらニヤニヤしつつ凪帆は去って行った。

それから俺は盛大に溜息を吐きながら仕事を再開する。


「やれやれ。全く」


プルルルル


「?.....今度は何だ.....」


スマホ画面を見れば。

明菜だった。

俺は電話に出る。


明菜は嬉しそうに、もしもし、と言ってくる。

今は一緒かな。凪帆さんと、とも。

俺は顎に手を添えて答えた。


「今は一緒じゃないぞ。別々だ」 


『あ、そうなんですね。いや。旅行の件はどうなったかなって思いまして』


「あー、えっとだな。アイツも行くそうだ。やっぱりな。両親も渋々納得したそうな」


『あ、そうなんですね。じゃあ決まりですね』


「あのさ。一応だけど同僚のアイツにも伝えて良いか?この事。嫉妬で気が狂われても困るし」


『構わないですよ。アハハ。でも自分持ちね。行くとしても。私は凪帆さんの分しか出さないです』


「.....」


可哀想だが。

戸田。

お前は見捨てられる運命の様だ。

俺は苦笑いを浮かべながらそのまま空を見る。

そして明菜に話す。


「なあ」


『何でしょう?』


「俺さ。今度サッカーするんだ。それで凪帆の親戚の子に教える予定だ。お前も来るか」


『あ!行きたいです!観たいです!』


何故この様な事を話したのか。

それは分からないが明菜は行きたいと言った。

ならば俺は止めるあれは無い。

思いながら、分かった。んじゃ今度な、と話す。

明菜は本当に嬉しそうに反応した。


『元輝さん。誘ってくれて有難う御座います!』


「まあ.....そうだな。一応計画していたから。だから大丈夫だ」


『元輝さんが活躍する姿。楽しみです』


「いやいや。お前.....試合じゃ無いんだからよ」


『でも楽しみですよ。試合じゃなくても。好きな人の活躍。それは楽しみで仕方がないです』


それから、ウフフ、と言う明菜。

俺は目を丸くしながらも、そうか、と納得する。

まあコイツが喜んでいるならそれで良いか。

思いつつ俺は柔和ながらも苦笑した。


『サッカー楽しみにしてます。頑張って下さい』


「期待されても困るからな?おまいさん」


『ウフフ』


それから怪しげな笑みを浮かべながら、じゃあ電話切りますね、と電話を切る感じを見せた。

俺は、じゃあ、と言いながら電話を切る。

そして俺は天井を見上げる。


「まあ.....これで良かったんだよな。俺は」


考えながら俺は、やれやれ、と思いながら後頭部をガリガリと掻く。

すると、お兄ちゃん。風呂に入ったよー、と声が聞こえた。


俺は、おう、と言いながら背後を見てから見開いた。

何故ならその場に.....胸元を開けた様なパジャマの着方をした良い香りのする人間が居たから、だ。

馬鹿野郎かコイツ!?


「何やってんだコラァ!」


「え?.....あー、これ?艶めかしいかな?」


「アホ!だから油断するなと!誘惑するなって言ったろ!」


「んー?誘惑してないよ?.....何時もの服装ですが?.....アハハ。お兄ちゃんのスケベっち。アハハ」


「お前な.....」


俺は頭を掻きながら苦笑いを浮かべる。

それから盛大に溜息を吐く。

全くな、と思いながら凪帆を見つめる。


凪帆は俺に対してニヤニヤしていた。

そして胸を持ち上げる仕草を.....うん。

する、ってかオイ。

 

「あのな!.....良い加減にしろよ。全く」


赤くなりながら俺は怒る。

俺は後頭部をガリガリまた掻きながら馬鹿にしてくる凪帆を見た。

仕返しとばかりに俺の上着を凪帆に放り投げる。

クェ!っと驚きの声を発した凪帆を見ながら溜息を吐いた。

でも.....こんなだけどコイツは良い奴なんだよな、と思う。


「なあ。.....凪帆」


「なーに?お兄ちゃん殿」


「有難うな。本当に」


「?.....変なお兄ちゃん。.....アハハ」


着ながら凪帆は?を浮かべてクスクス笑った。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

マジに俺達は.....うん。

出会うべき運命だったのかもな。

しかし.....色々とまあ疲れるけど.....。

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