第16話 元輝が気付いてない事

そもそも女子と一緒に家に泊まるとか。

有り得なさすぎるんだが.....、と思いながら苦笑する。

だけど凪帆は本気で泊まる様だった。

全くコイツは.....、と思う。

それから俺は溜息を吐いた。


「凪帆。マジに泊まるのか」


「.....うん。で.....寝る部屋もお兄ちゃんの部屋」


「.....嘘だろお前.....冗談だよな?」


「じゃあ私は何処で寝ろっていうの?お兄ちゃん」


「.....」


非常に困るんだが.....。

幾ら知り合いの女子とはいえ良い香りがしては寝れない。

ムラムラもするかもしれない。

本気かコイツは、と思いながら凪帆を見る。

凪帆はニコニコしながらベッドに横になったまま俺を見上げる。


「お兄ちゃん。好き同士だから大丈夫だって」


「....馬鹿野郎.....相違問題じゃ無いって.....!」


「.....私はお兄ちゃんの部屋で寝たいな」


「.....あのな.....」


俺は額に手を添えながら.....凪帆を見る。

凪帆は構わず漫画を読んでいたが。

その姿に少しだけイラッときたので俺は凪帆の顎を持った。

それから俺に向かせる。

凪帆は、へ?、という感じで俺を見る。


「.....俺は肉食だぞ。.....お前も食っちまうぞ?良いのか。それぐらい危ないんだぞ。男の部屋に泊まるなんて」


「.....べ、別に?良いよ?お兄ちゃんだったら。.....キスも....し、しようか?ア.....アハハ」


「.....そうか。お前の将来が心配だからやったんだが?震えているぞ」


俺は盛大に溜息を吐く。

それから.....見つめる。

凪帆は赤面して驚いていたが息を整える。

そして俺を見てきた。

それから笑顔を浮かべる。


「.....お兄ちゃんは襲わないよ。.....私を。.....だって信頼しているから。その性格をね。.....お兄ちゃん。心配しなくても私はお兄ちゃん以外の人の家に泊まらないから。危ないって思っているからね」


「.....だったら良いけど」


「.....そういう所もお兄ちゃんだよね。.....アハハ。心配もしてくれる。.....だから大好きなんだ。お兄ちゃんの事」


「.....別に心配した訳じゃ無いけど.....」


「うっそだぁ。お兄ちゃんは私が心配なんでしょ?アハハ」


このクソガキ。

思いながらも.....苦笑した。

そして笑みを浮かべる。


まあ.....そうだな。

心配だと言えるかもしれない。

だから今、試したのだ。

思いながら俺は.....凪帆の額を弾く。

それから再び苦笑する。


「.....お前さ。.....ヘロヘロしているから何だか不安なんだよ」


「.....うん」


「.....だからな。.....俺はお前の事もだがみんな気に掛けている」


「.....うん。お兄ちゃん。分かってる」


ああ。そうだ。

この際だから....言うけどね。

お兄ちゃん。

貴方はどうなのかな?、と聞いてくる凪帆。

俺は思いっきり見開いた。


それはどういう意味だ?、と。

うん。それはね。.....貴方は私達を気に掛けているけど.....自分自身にはヤケになってない?、と。


「.....そんな事は無いぞ?お前.....どういう意味だよ」


「.....お兄ちゃん。.....私達は貴方が心配なんだよ?だって.....お酒。.....やけ酒もしているよね?それって.....何かストレスがあるからじゃないの?」


「.....俺は.....そんなつもりは無いんだが.....」


「.....サッカーとかのストレスじゃない?.....私が.....サッカー教えて?って言った時も.....顔を顰めて嫌がったよね。それは.....弱いからだけじゃ無いと思う」


俺はビクッとした。

それから.....凪帆を見る。

凪帆は俺を心配げな目で見てくる。

俺は過去を思い返す。

そうなのか?、と思ってしまった。


「.....お兄ちゃん。.....貴方は何がしたいの?」


「.....凪帆.....俺は.....」


「.....お兄ちゃんなら大丈夫だと思うけど.....でも心配だよ」


「.....凪帆.....」


凪帆は俺に抱き付いて来る。

それから.....俺を見上げてきた。

俺は涙目のその姿を見つめる。

そして俺は胸に手を添えた。

ドクンドクンと波打っている.....心臓。


「.....お兄ちゃん。.....私は貴方が好き。.....大好き。.....だからこそ.....心配」


「.....ああ。.....有難う。.....凪帆」


「.....サッカーしたい?」


「.....したいかもな。実は.....今まで逃げていたんだろうと思う。.....だから嫌な事から逃げないで.....立ち向かうよ」


「.....そうだね。.....お兄ちゃん。有難う。その答えが聞きたかったよ」


そうか。

俺が酒を飲むのは.....それが理由だったんだな。

思いながら俺は.....涙を浮かべながらヨシヨシされながら涙を拭った。

それから意を決する様に顔を上げる。

そして.....凪帆の頭を撫でた。


「.....凪帆。.....本当に有難う。気付かせてくれたな」


「.....私は何もしてないよ。.....お兄ちゃんが心配だって言っただけだから」


「.....俺を心配してくれて.....その言葉が出たんだろ?.....だったら感謝しかない。.....有難うな.....本当に」


「私は.....うん。.....お兄ちゃんがそう言ってくれて有難う。.....嬉しい」


お酒の量.....減らしてね。

と言ってくる凪帆。

俺はその言葉に、ああ、と答えながら。

凪帆を抱き締めた。

こんな事をしていたら明菜が怒るだろうな.....とは思ったが、だ。

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