第10話 デートして下さい

凪帆と栗林。

この2人は.....重要な人物だと思う。

10年間も俺を想い続けている点で、だ。

俺は思いながら.....凪帆に言われた通り何も飲まず食わずで寝た。

そしてエロ本も少しだけ捨てた。

それから翌日の事。


プルルルル


「.....ん?」


チュンチュンと小鳥が無く中。

何か電話が.....鳴っている気がするのだが。

土曜日なのに.....勘弁してほしい。

思いながら俺はゆっくり起き上がる。

そして.....スマホの画面を見ると。


(栗林)


と書いてあった。

まだ午前8時なのに何だってんだ.....?

思いながら俺は電話に出る。


すると、元輝さん。窓から下を見て下さい♪、という感じで声がしてきた。

何だよ下って.....、と思いながら窓から見下ろす。

そこに手を振っている栗林がかなり可愛い姿で立っていた.....。


Tシャツにカーデガンコートといった所か?

カーデガンコートだっけ?あの柔い感じの服装。

何しているんだ?


『元輝さん。私とデートしましょう』


「.....お前アホか。今日は休みだ.....」


『もー!!!!!そんな事言っていたら彼女が永遠に出来ませんよ』


「.....いや。今日土曜日だし。.....デートこの前もしただろ.....営業サボる形で」


『良いんですね?.....私は通報しますよ?.....隣の家に』


止めて下され。

って言うか何で住所とか知ってんだ!!!!!

俺は眉を顰めながら電話に話す。

すると、ふっふっふ。女子には秘密が多いのです、と答えた。

電話番号とかも交換したのかよ.....。


『とにかく。デートです。.....元輝さん。お願い♡』


「.....分かった分かったよもう!俺の負けだよ。.....ったくこん畜生め.....」


『やった』


待ってます、と言いながら電話を切る栗林。

俺は盛大にため息を吐きながらスピーカーにした。

それから電話を掛ける中で準備をする。

え?誰に掛けているかって?

誰もが予想通りの人物である。


『もしもし?どうしましたか?お兄ちゃん』


「お前な.....良い加減にしろよ。俺の個人情報を何だって思ってんだ」


『だって親友ですから。お姉ちゃんですから。.....今日はお兄ちゃんを貸してあげるって約束しました』


「.....馬鹿なの?ねえ」


『馬鹿じゃないです。.....私は至って普通ですよ?アハハ』


俺の個人情報ダダ漏れじゃねーかよマジに。

すると凪帆はこう言ってきた。

だってエロ本所持しているお兄ちゃんですもの、と、だ。

エロ本を人質に取るとか最低!

思いながら.....俺は盛大にまたため息を吐いた。


「エロ本を人質に取るとは卑怯也.....」


『お兄ちゃんが悪いです♪』


「.....」


コイツ。

この野郎め覚えておけ。

思いながら準備が整ったので涙目で電話を切る。


それからそのままスマホを持ってから階段を降りる。

そして少しだけ準備してからドアを開けると目の前にニコッとした栗林が居た。

俺に対して手を振っている。


「元輝さん♪」


「.....お前な.....先輩を休ませろ。頼むから。俺は休みの日は寝ていたい


「もー.....そんな事言わないで下さい。.....私は貴方が好きなんですから!!!!!」


「大声で言うな!!!!!」


何を言ってんだコイツ!

思いながら周りを見渡す。

ギリギリで誰も居なかったから良いものの!

誰か居たらどうする気だよ!

思いつつ俺は額に手を添える。


「.....もう良い。行くぞ栗林」


「私の名前は明菜です」


「.....それはどういう意味だ」


「.....明菜ですよー。まさか私だけ下の名前で呼べと?嫌ですよそんなの。名前で呼んで下さい」


「.....お前冗談だろ?.....嘘だろ」


何で女性を名前で呼ばないといけない。

するとムッとした栗林さん。

凪帆さんだって名前で呼んでいるのに?、と言いながら。

俺は何度めかも分からないため息の後。

赤面で名前を呼ぶ。


「明菜」


「はい♪元輝さん」


「.....何で俺はこんな目に遭っているのだ.....」


俺は額に手を添えながら首を振る。

明菜はニコニコしながら俺を見てくる。

それから手を差し出してきた。

今度は何だ.....。


「元輝さん。手を繋ぎましょう」


「.....嘘だろお前。.....大胆すぎるって」


「だって仮恋人なんですから。.....手を繋いでほしいです」


「.....潤んだ目で見上げるな.....」


何で手を繋がなくては.....いけないのだ。

思いながらも指示されたのでそのまま手を握る。

うわ!あったか!?

しかも柔らか!?

女性の手ってこんな感じなの!?


「お前.....柔らかいな」


「.....私の手ですか?.....そうですね。.....も、元輝さんの手もゴツゴツしてて.....安心します.....」


「赤面するなよ。俺だって恥ずかしいのに!!!!!」


何でコイツ赤面してんの?

俺が出だしじゃないよね.....?

思いながら周りを見ると。


うわ何アイツ.....イチャイチャしまくってから。

的な感じで童貞共が俺達を見ていた。

駅前ロータリーなんだが。


「.....って言うか何処行くんだ。.....俺は近場が良い」


「彼氏の返答としてマイナス000ですね」


「.....何だその007的な.....」


「当たり前でしょう。.....何が近場ですか。.....美術館行きますよ」


「.....はぁ?」


何で美術館.....。

こんな素晴らしき土曜日に.....。

考えながら居たが。

彼女は彼女らしい考えが有る様だった。

つまり.....まあ。

仕事の助けになれば、という、だ。


「.....元輝さん。私は美術品を観るのが好きなんです。実は」


「.....そうか。.....まあそれは良い趣味だな.....」


「.....あ!先輩そう思ってないですね!全く.....」


「.....いや。それは思ってる」


「.....え?」


お前の意外な趣味が見れて興味深い。

それも.....良い趣味だな、って心から思うよ、と真面目に答えた。

思っている事をそのまま言う。

するとボフッと音が鳴る様に赤面した明菜。

それから.....俯く。


「.....か、彼氏の返答として.....マイナス00ですね.....」


「.....何でや.....でも0が一つ減ったな.....」


「そうです。.....0を減らす様に努力して下さい」


「.....分かった.....うん」


恥ずかしい。

それにどうにでもなれ.....と思う。

思いつつ俺は引き摺られる様にロータリーから電車に乗ってから。

隣の駅の美術館にやって来た。


全く.....困ったもんだな朝早くから。

でも部下だしな.....。

成長を見守る義務もあるか。

考えながら俺は胸の中で強制的に納得させた。

自分自身を、であるが.....。

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