第9話 悩む凪帆

何が起こっているのか全く分からない。

どういう意味なのか。

それはこういう事である。


先ず俺は2人の女性に告白された。


片方は10年前に誓い合った女の子である。

片方は10年前に俺が事故から救った女の子である。


こんな俺を2人とも好きだという。

特に俺は.....10年前に俺が救った少女で。

成長して成人になった俺の部下である女性の告白に衝撃を受けた。


まさかこんな再会を果たすとは思わなかったのだ。

その為に俺は衝撃を受けたのだ。

だが俺はその告白を断った。


それは.....自分がまだ未熟だから、というのもある。

そして彼女に釣り合うのか、と恐れてしまった点もある。

今はまだ好いてもいないのである。

その為に俺は.....告白を断った。


「有難うな。栗林」


「.....何がですか。.....元輝さん」


「.....俺を好いてくれてだよ。本当に有難うな」


「.....そんなのあの状況で好きにならない方がおかしいですよ。.....元輝さん。.....だから愛していますよずっと。10年経っても忘れられないです」


「.....だな」


そうして俺達は職場に帰って来てから。

そのまま部下達に混じってから仕事をしつつ。

そして.....帰宅の途についた。


それから俺は直ぐに隣の家に呼び出される。

誰かと言えば.....そうだな。

凪帆に.....である。

俺は顔を引き攣らせてしまった。



「お兄ちゃん。.....あの女性はお兄ちゃんの彼女かな?」


「.....いや.....彼女では無いんだが.....」


「じゃあ何故あんなに親密なのかな?いくら部下とはいえ.....親密だよね?」


「.....あのな.....」


ここは凪帆の部屋だ。

俺は凪帆の部屋の中央に正座させられている。

そして凪帆が目の前で仁王立ちしている。

頬を思いっきり膨らませて、だ。

困ったもんだな.....。


「お兄ちゃん!!!!!あれ程、浮気は駄目って言ったのに!!!!!」


「.....凪帆。これは言っておく。.....実はな。.....火に油を注ぐ感じになるかもしれないが.....あの女性はな。.....10年前に俺が救出した女の子だったんだ。.....それで彼女は俺に告白してきた」


「.....ふえ!?」


「.....お前に隠すつもりはないから真っ先に話す。.....そういう事なんだ」


「え.....え!?」


目をパチクリしながら俺を衝撃的な物でも見たかの様に見てくる。

俺はその事に座布団に腰掛けながら.....凪帆を見る。

お前だから包み隠さずに話すから。

俺はお前を信用しているから、と言う。

凪帆は衝撃を受けた様な顔のままお座りした。


「.....じゃ、じゃあ.....その。あの栗林さんが.....お兄ちゃんの!?」


「.....ああ。.....かなり衝撃だったよ俺も。.....まさかこんな形で再会する事になるとは思って無かったけどな」


「.....成程.....じゃあ.....ライバルなんだ。私の」


「.....え?」


「.....だってお兄ちゃん。.....その人だって10年間探していたんだよね?お兄ちゃんを。.....だったらライバルだよ。.....私だってまだ実ってないから。恋が」


そんな言葉が飛び出すとは思わなかった。

俺は衝撃を受けながら笑みを浮かべながらも複雑な顔の凪帆を見る。

凪帆がライバルと認識するとは思わなかったのだ。

敵視するかと思ったのだが。

そう覚悟していた。


「.....10年も想い続けていた人が私以外に居るんだね。.....私ビックリだよ」


「.....正直、お前が不愉快な顔をするかと思ったのだが」


「.....そこら辺の人が寄って来たのだったら流石に不愉快かも。.....でも10年も.....流石にそれは私もツッコミを入れるのは申し訳無いかなって」


「.....お前らしいな。.....凪帆」


「私らしいかな?アハハ」


でも話の題材はズレたけど。

私に断りも無くイチャイチャしていたのは事実だよね。

と俺をハイライトの無くなった目で見てくる。

俺はゾッとしながらも、あ。はい、と答えて.....青ざめる。

全くコイツは.....怖いんだが。


「お兄ちゃん。.....でもイチャイチャは私に許可をなるだけ取ってね.....?」


「.....あ、はい.....」


「それと!」


「はい?」


「.....言い辛いけど。.....こんな事を言うのもおかしいけど。.....栗林さんに優しくしてあげて」


「.....え」


お兄ちゃん。栗林さんは仮にもお兄ちゃんが好きだから、と笑みを浮かべる。

俺は目を見開きながら凪帆を見る。

それから苦笑した。

お前どっちだよ、と言いながら、だ。

だって私はどっちも譲れない、と文句を垂れる。


「私は.....仮にも応援したいけど.....でも私のだから。お兄ちゃんは。.....うー」


「.....」


優しい所も変わってないもんだな。

凪帆は、だ。

思いながら俺は苦笑いを浮かべながら.....立ち上がる。

それから凪帆の頭を撫でた。

そして見つめる。


「.....凪帆。.....有難う」


「.....何回も言われなくても分かってるよ。お兄ちゃんがそういう目をしているからね」


「.....そうか。有難うな。でも。言葉で伝えないといけない点もあるだろうしな」


「.....うん。お兄ちゃん。.....やっぱり貴方の事が大好きだよ。何時迄も一緒....だよね」


そうだな、と俺は答える。

そして.....正式に俺は栗林と。

凪帆に恋愛対象として追われる身になった。

晴れて、だ。


それが良い事なのかどうかは分からないが。

全く良くないかもしれないが。

今の俺は.....幸せ者だなって.....そう感じる気がする。

俺は.....笑みを浮かべながら凪帆の頭を撫でた。


「あ。.....ねえねえお兄ちゃん」


「.....何だ?アハハ」


「.....巨乳だからってエロ本買うの止めてね?数えて100冊って怒るよ?流石に」


「.....あ、はい.....」


100冊もあったっけ?

マジな顔だった。

怖い点は変わってないんだが.....。

俺は顔を引き攣らせながら.....凪帆の顔を伺う。


凪帆の顔は死んでいた。

ニコッとしながら.....である。

こ、こわ.....。

俺26歳なのに.....年下が怖い.....。

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