動き出す世界

第6話 凪帆に関する真剣な話

何だか知らないが凪帆宅で夕食をご馳走して頂く事になり。

俺はご馳走になった後でそのまま帰宅した。

すると.....その時だ。


俺に凪帆がこう言ってきた。

紅潮しながらも笑顔で、であるが。

明日から覚悟してね。お兄ちゃん、と。


俺は、何の事だろうか、と思いながら首を傾げて.....から。

そのまま家に帰宅する。

すると、元輝、と親父に呼び止められた。

俺は見開きながらそのままリビングの椅子に座っていた親父を見る。

読んでいたらしい新聞を置きながら、だ。


「少しだけ話がある。.....座れ」


「.....話?.....何の話だ。俺は疲れているんだが」


「.....大切な話だ」


「.....!.....分かったよ」


親父は真剣な眼差しで俺を見てくる。

そしてリビングの椅子に腰掛けた俺を真っ直ぐに見据えてくる。

それから重たそうな口を開く前に。

一杯やらないか、と言わんばかりにビールを差し出してくる。


「.....何の話だ。.....それを聞いてからだ」


「.....これは緊張を解く為だ。飲むんだ」


「.....分かったよ.....何だよ.....」


訳が分からないまま。

俺は注がれたビールを飲んでみる。

すると.....親父は語り始めた。

お前はお隣さんの凪帆さんが好きなのか、と。

俺は見開く。


「.....真剣な話だ。.....だが.....お前は昔の事もあるから俺が真剣な話になると殆ど俺の前から消えるからな」


「.....それでビールを差し出してきたのか。親父」


「.....そうだ。.....俺はお前に凪帆さんの事を聞きたい」


「.....俺は今は凪帆を幸せにする力は足りない。.....だから俺は今は好きとかそんなの考えられないんだ」


「.....」


「相手は10年も俺を想ってくれている。.....でもな。.....俺はそんな力は無いって思ってる。.....でもいつか。俺は彼女を幸せに出来る、好きになる時が.....来るんじゃないかって思ってるけどな」


だけど今は.....彼女の想いに応えるには早過ぎるのでは無いかと思っているのだ。

それは互いの為であり.....そして将来の為と思っている。

まだ.....このままで居たい。

その事を親父に伝えると.....親父は顎に手を添える。

それから俺を見てくる。


「お前の意見が聞けて良かった。その様にしっかり考えているのだな」


「.....軽く見ていたのかよ。俺を」


「.....少しだけな。.....だが私の息子だ。仮にお前は。.....だからそういう事は無いとは思ったがな」


「.....俺だって.....凪帆の想いに応えたいよ。.....だけど全てが早過ぎるんだ」


「.....」


そうか。

お前は良い息子に育ったな、と親父は俺に対して笑みを浮かべる。

その姿は.....10年ぶりに見た光景だった。


俺は.....少しだけ恥ずかしがりながら頬を掻く。

何だってんだ、と思いながら。

それから親父は椅子を引いて立ち上がった。

そして俺を見てくる。


「.....俺は風呂に入って来る」


「.....そうか。.....気を付けてな」


「.....元輝」


「.....何だよ」


「.....10年前はすまなかった」


「.....今更だな。.....俺は別に親父を恨んじゃいないから。でも.....遠くはなったな」


そうか、と親父は言いながら。

そのまま去って行った。

洗面所に、だ。

俺はそれを見送ってから目の前のビールを見る。

泡立つビールを、だ。


「.....ったく。いきなりなんだと思ったら」


それから立ち上がる。

そして2階に行こうとした時。

電話が掛かってきた。

その電話の主は.....栗林だ。

栗林?仕事の電話か?


「もしもし?」


『あ.....もしもし。先輩』


「.....どうした?企画書とか仕事の関係か」


『違います。.....わ、私.....その』


「.....何だ。俺は疲れているんだぞ。早くしてくれ」


先輩.....その。

私と映画を観に行ってくれませんか?

と言ってくる栗林。


俺は?を浮かべて、それはどういう事だ?、と聞く。

すると栗林は、も。もしかしたら企画の参考に.....なるかなって.....、と言ってくる。

俺は目をパチクリした。


「.....分かった。それじゃ行こうか。.....何時が良い?」


『.....えっとですね.....じゃあ今週の日曜日に.....』


「.....分かった。.....それじゃ日曜日にな」


『は、はい!有難う御座います!!!!!』


大きな声でとても嬉しそうな感じで反応する栗林。

俺は苦笑しながら、何だってんだ?、と思ってしまう。

それから栗林は、じゃ。じゃあ先輩。お忙しいと思いますから、と言ってくる。

俺は、ああ。じゃあまた明日な、と電話を切った。

そして天井を見上げる。


「.....ふう、忙しいな.....」


そう思いながら、だ。

それから俺はスマホをポケットに仕舞い込み。

苦笑しつつ天井を見上げたまま頬を叩く。

そうしてから動き出す為に自室に向かった。



自室に戻ってから風呂とか入ってから。

寝てしまった様だ。

俺は目を.....開く。


すると目の前に.....何故か不機嫌そうな凪帆が居た。

俺は思いっきり見開いて、ホァ!?、と言ってしまい。

仰け反った。


「おはよう。お兄ちゃん」


「.....な。凪帆。何やってんだお前は。ビックリさせんな」


「そんな事はどうでも良いよ。お兄ちゃん。.....これは何?」


凪帆は缶ビールを指差す。

そしてつまみも、だ。

雑誌の山も、だ。


俺は汗を流しながら、これは面倒臭くてな.....すまん。

と言いながら凪帆を見る。

凪帆は怒りに#を浮かべている。


「お兄ちゃんの身体が心配。.....今日は元気そうだけど」


「.....?」


「.....」


無言で赤くなりながら指差す。

俺の下の方を、だ。

そして俺は赤面して両手でそれをババッと隠す。

そういやパンツ姿だった.....。

そして朝だしな.....。


「お兄ちゃんが元気で良かったけど。お酒禁止」


「.....は!?」


「.....エロ本も禁止。つまみも禁止。身体が心配」


「おいおい。冗談だろ。お前に何で指示されなくちゃ.....」


「黙って従ってね?」


マジな顔で俺を見てくる凪帆。

余りの怖さに俺は何も言えなくなった。

そして威圧しながら凪帆は、もう、と言いながら缶ビールを片す。


スマホの時計を見ると7時40分になっている。

オイオイ.....時間が無いだろうに、と思いながら見る。

すると凪帆は、今日は私の学校はお休みだから、と言ってくる。


「でも会社はお休みじゃ無いんだから。ほら早く」


「.....いや。でも.....片させるのは流石に.....」


「お兄ちゃん。早くして.....ね?」


「.....あ。はい」


若妻っぽい凪帆が怖い。

とにかく怖い。

思いながら俺は青ざめながら威圧されつつそのまま下に降りて行ってからスーツに着替えたり髪を整えたりした。

それからまた自室に向かうと。


「.....大丈夫か?」


「.....お兄ちゃんのすけべ」


「.....は?」


「.....エロ本持ち過ぎ。.....そ、そんなに.....こんな胸の大きい子が好きなの」


「.....そ、そういうつもりじゃ無いんだが.....男部屋だしな」


これは.....どうしたものかな。

思いながら赤くなってお怒りの凪帆を見る。

この先が思いやられそうだ。

思いつつ俺は.....そのままドアを閉めた。

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