第3話 凪帆の涙(内容改訂)

栗林明菜という女性。

俺にとっては部下だが.....ただの部下である筈だ。

だけどずっと気になっている点がある。

それを考えながら.....お昼時が終わってから栗林を見てから仕事を進める。

何が気になっているのかといえば。


10年前の.....あの時の。

女の子じゃないかと思っているのだ。

だけど.....まあ違うとは思うけど。


そんな運命的に重なったりする筈が無い。

考えながら俺は溜息を吐きつつ書類を纏めたりしていると戸田が覗いてきた。

何だ一体、と思いながら戸田を見る。


「.....どうした」


「.....いや。.....お前が珍しく.....栗林の誘いに乗るなんてな、と思ったんだ」


「.....まあ確かにな。.....俺はお前と一緒に動くのが好きだからな」


「.....ああ。人嫌いだもんなお前」


「煩いな.....」


俺は戸田を睨む。

それを躱す様に、でも本当に珍しいよな。お前らしくない、と言ってくる。

その事に少しだけ溜めて.....俺は、確かにな、と回答した。


10年前のあの事故以来。

俺は.....色々なものが苦手になったと思う。

だからこそ.....動けないのだ。


「お前はサッカー続けたいって思わないのか」


「.....遠矢っていうチームメイトの少女にも同じ事を言われたさ。でも俺は後悔はしてない。.....だから続ける気はない」


「.....そうか。.....お前がこういう道を選んだならそうだよな」


「ああ。だから.....まあ良いんだ」


「.....そっか」


そして戸田は、じゃあ仕事に戻るわ、と言ってくる。

俺はそれに、おう、と答えながらパソコンを見る。

すると戸田が、でも栗林はいい女性だ。.....見逃すなよ、と言ってきた。

何を言ってんだ。

アイツには彼氏が居ると噂で聞いたぞ。


「.....無い無い。見逃すさ」


「.....全く。ひねくれ者め」


「.....そんな人間だからな」


そんな感じで会話をしてから。

そのまま今日の仕事は終わった。

それから.....帰宅すると.....。

何故か俺の部屋に凪帆が居た。

何か片付けを.....している。



「何やってんだお前は」


「.....見て分かりませんか?片付けです」


「.....いやそれは見れば分かる.....んだが。.....18時だぞ。.....どうするんだ。家に帰れよもう」


「.....ああ。ご心配なさらずだよ。お兄ちゃん。.....私の家、横だから」


「.....そうか.....って!?何!!!!?」


あれ?おばさまは知っていたよ?、とニヤニヤしながら俺を見てくる凪帆。

そんな馬鹿な事が!?、と思いながら家の横を見る。

そこに確かに明かりが.....。

俺は驚きの眼差しで凪帆を見る。


「.....凪帆。嘘だろ」


「.....?.....何で嘘を吐くの?私は事実しか言ってないよ」


「.....オイマジか.....」


俺は額に手を添える。

すると、それはそうとお兄ちゃん、と俺を怒った声で呼ぶ凪帆。

何だってんだ、と思いながら顔を上げる。

そうするとエロ本を投げてきた。

お兄ちゃんのすけべ、と赤くなって言いながら、だ。


「お兄ちゃんはこんなもの集める様な人だったっけ?」


「.....10年経ってんだぞ。.....俺だってそれなりの男だからな」


「.....ふーん.....」


「.....何だよ」


「.....じゃあお酒は?」


「.....酒に溺れて悪いか」


悪いよ、とかなり怒った様に言ってくる凪帆。

それから、あの時の格好の良いお兄ちゃんは何処行ったの、と言ってくる。

俺はあの日には死んだんだよ、と言いながら凪帆を見る。

凪帆は見開いた。


「.....最低。.....死んだとか」


「お前な。10年前の話で事故に遭ったんだぞ俺は。.....そんな人間がマトモで居られると思ってんのか」


「.....お兄ちゃん。幻滅したよ。.....何で酒なんかに溺れるの」


「.....サッカーが嫌いだからだ」


「.....凪帆は.....そんなお兄ちゃん嫌い」


俺はビックリしながら凪帆を見る。

まるで子供の様に言いながら泣き出した。

そして号泣する。

俺はその姿に慌てふためく。

そんなに泣くなよ!?


「.....お兄ちゃんが.....チームメイトの写真に埃を積もらせるとは思って無かった」


「.....」


「.....お兄ちゃんが!.....酒に溺れるとは思ってなかった」


「.....」


「.....お兄ちゃん。.....戻って来てよ」


酒に逃げたら駄目だよ、と言ってくる凪帆。

俺は.....逃げている訳じゃ無いんだが。

思いながら凪帆を見る。

煩いな。


「.....俺は酒が好きだからな。.....辞めるつもりは無い」


「.....お兄ちゃん.....大嫌い」


「.....凪帆.....」


「.....」


そしてゴミ袋に入ったゴミを殴り捨ててから。

そのまま凪帆は帰って行ってしまった。

俺はその事にゴミ袋に入った大量の空き缶を見ながら。

盛大に溜息を吐いた。

何だってんだ一体、と思いながら、だ。


「.....凪帆。人は.....変わるもんなんだよ。.....お前も18なら分かるだろ」


言いながら俺は空き缶を踏み潰しながら。

そのまま着替えを始めた。

それからそのまま夕食を取ってから。

そうして寝た。

だがその翌日の事だ。



今日は火曜日だ。

思いながら目を覚ましていると。

目の前に起こった顔の凪帆が立っていた。

俺はビックリしながら起き上がる。

何やってんだコイツ!?


「お兄ちゃん。お早う」


「.....お、おう。お早う」


「.....お兄ちゃん。お酒辞めて」


「.....だから言ってんだろ。俺は.....」


「駄目。.....辞めないと私は.....貴方を襲う」


意味が分からん。

と思い、起きあがろうとしたのだが。

よく見たら足が紐で縛られていた。

ば。馬鹿な!?、と思いながら愕然と凪帆を見る。

凪帆は服を脱ぎ始めていた。


「.....辞めないとお兄ちゃんにエッチな事をする」


「お前アホか!!!!!何をどうしたらそこまで吹っ飛ぶ!?」


「お兄ちゃん。私はかなり真剣だよ」


「.....!」


酒を辞めるか私を犯すか。

どちらかにして、と言ってくる。

な。ば!?、と思いながら凪帆を見るが。

凪帆は服を脱ぐのを辞めない。

これには流石の俺も参ってから、分かった!分かったよ!、と話す。


「.....本当に?」


「.....酒は辞める。.....だけど突然の禁酒は難しい。.....だから徐々に辞める。やけ酒はしない。それで.....良いか。約束は守る」


「.....うん」


涙を拭いながら服を脱ぐのを辞めてから。

今度は着始めた。

俺はホッとしながら足元の紐を解く。

それから.....凪帆の頭に手を添える。

そして、無茶な事をするな、と言い聞かせる。


「.....だってお兄ちゃんの体が壊れちゃうのは嫌」


「.....分かった。もうしないよ。.....約束する」


「.....お兄ちゃんはサッカーしている姿の方が良い。私」


「.....サッカーはもう無理だ。.....だけど.....そうだな。.....分かった。頑張るよ」


「有難う。お兄ちゃん」


凪帆は、えへへ、と笑顔を見せる。

実はまだ高校に転学出来ないから今日は休みなんだ、と言いながらゴミ袋を拾う。

それから、だからこの部屋を片付けるね、と笑みを浮かべる。

俺は、分かった、と言いながらスーツを手に取る。


「.....それからお兄ちゃん。風邪引いちゃうからその服装は禁止」


「.....あ。すまん。要らないもの見せて」


「.....うん。.....ちょっと恥ずかしい」


「.....そうですね。すいません.....」


それからパジャマを直ぐに着てから。

そのまま動き出す。

スーツを持ってから、だ。

すると凪帆が背後からハグしてきた。

俺は、!?、と思いながら凪帆を見る。


「.....お兄ちゃん。大好きだよ」


「.....分かった。.....有難うな」


「.....うん。.....じゃあ気を付けてね。朝食作ったから」


「.....ああ。色々と御免な」


今日は晴れている。

だから.....俺も気持ちは晴れ晴れな感じだ。

何時も以上に、だ。

ここまで心晴れ晴れな気持ちは久々だな、と思いながら俺は階段を降りた。

すると母親が苦笑しながら待っていて。


「.....凪帆ちゃんを泣かせたら駄目よ」


と少しだけ怒りながら言われた。

俺は見開きながらもその言葉に頷く。

そして準備をし始めた。

親父が髭を剃っていたのでその側で、だ。

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