第2話 栗林という部下と.....過去と(内容改訂)
取り敢えず.....イベントを企画する会社。
つまり俺の会社だが詫びの電話を直ぐに入れた。
イベントを企画ってのは要は.....地域のお祭りとか企画する会社だ。
その事でネズミ課長は激昂していたが。
それから、面倒くせぇな、と思いながら歩いて出社する。
こんな目に遭うとはな、と思いながら。
そして出社すると。
目の前に怒った顔が見えた。
頬にまるで胡桃とか打ち込んだ様な感じで頬を膨らませた女性。
俺の後輩にあたる部下になる.....栗林明菜(くりばやしあきな)だった。
25歳であり.....栗毛色の髪の毛のウェーブが特徴的である。
顔立ちは可愛い系の美女だと思う。
身長は5センチほど低め。
去年入社してきた.....1年目の後輩だが何だか.....気になっている。
それは何が、と言われたらそこまでなのだが恋とかじゃ無い。
えっと、だ。
つまり.....違和感があるのだ。
俺は.....何か重大な事を見落としている、という感じで、だ。
だけど今はそんな事を思っている場合じゃない。
現実に戻る。
そんな栗林の顔を見ながら、何だよ、と俺は言う。
「何で突然こんな遅くに出社して来たんですか。先輩」
「.....すまん。事情があって遅くなった。.....それでまあ.....今に至っている」
「.....そうなんですね。.....あ。書類の件。出来上がりました」
「.....おう.....ん?何でそんな無愛想なんだ」
「.....別に。.....さ、寂しかったとかそんなんじゃ無いですから」
言いながら栗林はそそくさと去って行く。
俺はその姿を見ながら?を浮かべていると。
目の前のデスクから俺の同僚の戸田法(とだほう)、26歳が顔を見せた。
黒縁眼鏡にそばかすのあるイケメンといった所の、だ。
それからニヤニヤしながら俺を見てくる。
んだよ一体。
「.....お前さん羨ましいですなぁ」
「.....何がだよ一体。.....これの何処が羨ましいんだ」
「.....それってもう愛じゃね?.....アタックしろよ。栗林に」
「.....愛?.....馬鹿かお前は。.....頼られているだけだろ。どう見たらそうなる」
「いやー。そうは見えませんけどな」
戸田はニヤニヤを止めた。
馬鹿な事言ってないで仕事すっぞ、と言う俺。
それからデスクに腰掛けると。
パソコンの側に何か貼られていた。
ウサギのメモ帳で、だ。
(先輩。お昼ご飯一緒に食べませんか)
「.....何のこっちゃ?」
思いながらも、まあ後輩と先輩の会話が出来るか、と思い。
そのままそのメモに返事を書いてから歩いて行ってから栗林に渡した。
栗林は、有難う御座います、という感じで柔和になる。
何だコイツは.....ドキッとするじゃないか。
思いながら俺は直ぐに戻って来てから.....仕事をし始める。
しかし.....凪帆の奴め。
10年ぶりに会ったからといってこんな目に遭わせやがって。
思いながら.....小悪い点は治ってないな、と思いながらそのまま仕事をする。
10年間.....想い続ける。
思春期とかに入ったらそんな10年とか明らかに諦めモードに近いと思うんだが。
1人のオッサンを追う為に10年だぞ?
一時も恋もせずに10年って有り得ないのだが。
何がどうなっているのだ。
「.....全く。今日は集中が出来ない部分が多いな.....」
考えながら俺は書類や企画書を纏めていく。
そうしていると.....例のネズミ課長が(通称ハゲ)が栗林に絡み始めた。
所謂.....ストレス発散で怒鳴り散らしている。
1年経ってもあの有様なのだが.....心底、鬱陶しい。
思いつつ俺は仕事の邪魔だ、と思い立ち上がる。
「.....課長」
「.....何だね。羽柴くん」
「.....栗林は俺の部下です。.....怒るなら俺にして下さい」
「しかし企画書の最後を作ったのは栗林だろう」
「.....関係無いです。俺に責任がありますので」
それから頭を深々と下げる。
申し訳ありませんでした、と言いながら、だ。
するとネズミ課長(通称、友田雄三)は眉を顰めながら、次から気をつけたまえ、と言いながら。
そのまま企画書を丸めて去って行った。
俺は少しだけホッとしながら栗林を見る。
「栗林。大丈夫か」
「.....はい。.....大丈夫です」
「.....ああいう課長だから。.....正直、苦痛に感じるかもだけど」
「.....はい。.....やっぱり先輩は何も変わってませんね」
「?.....変わってないとは?」
何でも無いです、と言いながら。
栗林は笑顔を浮かべつつそのまま頭を下げてから。
デスクの椅子に腰掛けた。
それから俺にもう一度、笑顔を浮かべる。
その様子を見てから俺もそれなりに笑みを浮かべてから。
そのまま椅子に戻った。
因みに平社員として俺は毎回こき使われているに近い部分もあり。
課長は何にも言えない様ではある。
☆
「先輩。お昼ご飯に付き合ってくれて有難う御座います」
「.....ああ。.....何だか美味い蕎麦屋があるんだってな」
「.....はい。.....美味しいお蕎麦屋さんです」
言いながら栗林は俺を案内する。
会社から出て.....右の方角。
少しだけ歩いた所に.....その蕎麦屋さんは有った。
俺は、こんな場所に蕎麦屋?、と思いながら店の戸を開ける。
すると中年ぐらいの女性が、あら。いらっしゃい、と言いながら古ぼけた厨房から顔を見せてくる。
凄い.....こんな場所に蕎麦屋があるとは。
「私のお気に入りのお蕎麦屋さんです」
「.....そうなんだな」
「.....先輩とお話がしたいと思ってこの場所を選びました」
えへへ、と歯に噛みながら栗林は笑顔を浮かべる。
俺はそんな姿に頬を掻きつつ。
そのまま席に腰掛けた。
それから俺達の側にメニューを持って来る中年の女性。
「天ぷらそばがおすすめだからねぇ」
「.....そうなんですね」
「うんうん。.....で。この方は彼氏さんかい?明菜ちゃん」
「か!?い、いや。違いますよ!」
その中年の女性と戯れる様に話す栗林。
栗林。
つまり彼女の.....事は結構知っている。
その為に、この中年の女性は母親代わりなのかもな、と納得した。
それからメニューを見つめる。
「先輩」
「.....何だ?」
「.....実はですね。今日.....付き合って欲しかったのは.....料理のレパートリーを増やそうと思うんです。.....それで意見を聞こうと思って」
「.....お前はやっぱり料理が好きなんだな」
「.....はい。.....片岡さん.....あの女性ですけど教わってから好きになりました。.....それ以前は嫌いだったんですけど.....」
栗林は過去を思い出す様にする。
それから苦笑した。
自嘲の様な笑みに見えたが.....。
思いながら、栗林、と声を掛ける。
空気が澱んでは仕方が無いので、だ。
「今度.....料理で考えた事を伝えたい。調べておくよ」
「.....あ。はい!お願いします!」
「それまでは.....まあ今の料理で頑張ってみたらどうだ」
「.....そうですね」
そうしていると。
何故か天ぷら蕎麦がやって来た。
注文すらもしてないのに、だ。
俺は驚きながら目を丸くしつつ片岡さんを見る。
片岡さんは、これは無料の1杯だからね、と笑顔を浮かべる。
「明菜ちゃんがお世話になっています」
「.....いえいえ。.....此方こそ。同僚なんですけど.....彼女はよく頑張っていると思いますよ」
「.....そのお礼で食べてほしくて。.....お願いしますね」
「.....栗林。良いのかこれ食って」
俺は片岡さんに言われてから許可を取る為に栗林を見る。
栗林は、片岡さんが言っているから、と笑顔を見せる。
俺は、そうか、と言いながらお言葉に甘えて食べる事にした。
すると片岡さんがもう一杯持って来る。
「ほい。いつものね。.....手打ち蕎麦よ。明菜ちゃん」
「有難う御座います!」
「明菜ちゃんも頑張っているからねぇ」
「そんな事無いですよ」
本当の親子の会話の様だな。
思いながら.....俺はその姿を見つめつつ。
そのまま天ぷら蕎麦を食べてみる。
うん.....かなり美味い。
流石だな、って思える様な、だ。
お袋の味と言える。
「栗林」
「.....はい?何でしょうか」
「.....有難うな。.....お前の大切な片岡さん紹介してくれて」
「.....先輩だからです。.....だから紹介しました。家族を」
「.....そうか.....」
答えながら俺はそのまま熱々の天ぷらを食べたりする。
すると栗林が俺を見てくる。
手打ち蕎麦を食べながら、だ。
先輩、と言ってきた。
「.....私.....魅力あります?」
「.....突然なんだ.....?」
「.....い、いえ。先輩に聞きたいなって」
「.....」
朝にもそう言われたのだが。
デジャブだな。
丁度.....凪帆に、だ。
俺は額に手を添えながらも、大丈夫、と答えた。
それから、魅力的だよ、と答える。
栗林は目をパチクリした。
「ふえ?」
「.....お前は十分に魅力的だ。.....自信を持ってな」
「.....え!?.....あ、はい!」
「何だよ。.....あくまでお前が質問したんだろ」
「.....い、いや。そんな回答を.....得られるとは思ってなかったので.....。10年前と同じ.....」
後半が小さくて聞き取れない。
何か言ったか?、と聞き返すが。
栗林は、駄目です。女子に聞き返すのは失礼ですよ、とニコッとした。
俺は???を浮かべながらスッキリしないまま。
無料になってしまった天ぷら蕎麦1杯をそのまま食べた。
「.....それにしても.....お前に良い家族が居るな」
「.....そうですね。.....本当に出会ったのは奇跡です」
「.....昔から通っているのか」
「.....そうですね。.....丁度.....5年ぐらい前から.....」
「それは長いな。.....家族も同然だな」
「.....ですです」
栗林は口角を上げながらそのまま手打ち蕎麦を食べる。
実はもう分かるかもしれないが。
栗林の家庭は余りにも複雑だ。
その為.....こうなっている。
そんな事を知っている俺だからこそ。
この部下には幸せになってほしいと願っているのだ。
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