小学生だった義妹みたいな存在だった少女が10年越しに俺に求愛をしてきてそして10年という言葉に後輩がおかしくなったんだが.....
アキノリ@pokkey11.1
その約束を交わした俺と2人
情けない日常に咲く花
第1話 10年目という全て(内容改訂)
社会人になってから2年目の5月辺りの事だ。
26歳である俺、羽柴元輝(はしばもとき)はこんな夢を見た。
どんな夢なのかというと.....こんな夢である。
俺は起き上がりながら溜息を吐いた。
酒の缶が転がっている様な荒れた部屋の中で、だ。
小学生の少女に目を輝かせて求愛される夢。
中学生ぐらいの女の子に好かれる夢。
しかし両親の都合で.....何処かに行ってしまったその少女。
そしてその現場の影響で直ぐに別れた少女。
これは全て10年前の話だ。
ずっと.....この胸に秘めていたが.....その夢の全てが解放された様に見た。
俺は欠伸をしながらボサボサの髪の毛と無精髭をそれぞれ撫でながらゆっくりとそのまま深呼吸する。
そして後頭部をガリガリと掻きながら.....立ち上がった。
全く.....何故こんな夢を今更?
俺は何を見ているんだ。
本当にアホなのか何なのか。
確かに懐かしい夢だが.....本当に今更過ぎて気持ちが悪く感じる。
もう2度と会う事は無いとも思っているしな。
しかも10年目の今年になって.....その夢を見るとは。
思いながら酒の缶を拾ってから投げる。
「.....しかしそんな勇ましい男も.....まさか何処ぞの会社の平社員でしかも実家暮らしの酒に入り浸る情けない男になるとは思ってないだろうな。.....でも懐かしい夢だな.....本当に。.....全てが懐かしい」
また俺は大欠伸をする。
横に置いてあるスマホが起床のアラームとして音楽を鳴らしている。
少しだけ早く目が覚めたので不要だったなこれ。
思いながら俺はゆっくりスマホの画面を押してアラームを消してからそのままベッドから降りる。
何というか5月って事もあるのかパンツとシャツという情けない姿で寝てしまった。
って言うか.....ここ最近はいつもこんな感じだな。
この癖は治さないといけないよな。
風邪引いてしまうかもしれない。
「.....しかし今年で10年.....か」
10年。
長かった様な短かった様な。
俺は足元の缶ビールと食いかけのつまみの置いてある様な汚い部屋をガニ股で移動してから.....俺の足を見る。
そこには火傷の傷がしっかり付いている。
まあ.....これが正夢なのだから仕方が無いとは思うがな。
サッカーを辞めて10年目でもある。
10年前の.....バス事故。
俺は首を振りながらスーツを取ってから人前に出るのでパジャマを着てそのまま下に降りていく。
すると母親の美子(よしこ)が、もー。遅いわよ、と朝食の支度をして待っていた。
俺は、すまん、と言いながらそのまま首をコキコキ鳴らしつつ支度を始める。
髪はボサボサで髭も生えてこれでは会社に行けない。
実家暮らしとはいえ.....ちゃんとしないとな。
するとその際に親父の大五郎(だいごろう)に会う。
相変わらずの真顔の怒っているのかすら分からない顔で俺を一瞥しそのままゆっくりとのそのそという感じで椅子に腰掛ける。
挨拶は短い。
まあ変わらずだな。
俺はそれは一瞥してから頭を下げて挨拶してまた大欠伸をして準備した。
そして朝食を食べてから.....ぼんやりしつつ歩いて玄関に向かうと会社へ出勤の為に靴を履き始める俺。
すると母親がこう言ってきた。
嬉しそうに声を弾ませながら、だ。
「そう言えばこのお隣の空き家に人が引っ越して来るんだって」
「.....そうか」
「.....そうなのか?」
「どんな人かしら。うふふ。楽しみね」
母親は隣人の引っ越して来るその事に浮かれるが。
俺にとっては別にどうでも良い話である。
だってそうだろう。
どんな奴が引っ越して来ようが.....反応とか生活が変わる訳ではあるまい。
迷惑な野郎だったら容赦はしないけど。
あくまでお隣同士なのだから。
「.....そいじゃ行ってきますな」
「はいはい。あ。お父さん。元輝。.....今日の夕食は魚だからね」
「.....うむ。そうか」
相変わらずの返事だな親父は。
考えながら俺は革靴を靴べらで履いてから。
時計をチェックして今もまだ少しだけ寒いのかコートを着た親父と別れ。
そのまま別の方角にある俺の会社に向かった。
勤めている会社だが。
今日もそれなりに頑張ろう、という気で歩いて行く。
そうして目の前を見る。
公園を通り掛かった時だった。
「.....?.....うん?」
そこに.....かなりの美少女の少女が居た。
少年達が遊んでいるサッカーボールを見ながら.....笑みを浮かべている。
ただの少女だが.....何か。
その少女を見ていると.....何かを思い出しそうだ。
『お兄ちゃん。約束。.....死なないって』
「.....まさかな」
10年前の.....少女?
凪帆.....。
まさかな。
俺は首を振りながらそのまま歩いて行こうとする。
のだがそれは遮られた。
何に遮られたのかといえば.....そうだな。
その.....ベンチに腰掛けていた少女に、だ。
いつの間にか俺が遮られていた。
「ねえ。お兄さん」
「.....?.....な、何だ君は」
「.....私ですね。姫子高校に行きたいんです。案内してくれませんか」
「.....え?.....何で俺?」
「.....貴方は知ってそうだからです」
笑顔を浮かべながら私服姿の少女は。
俺を見上げてくる。
身長は10センチぐらい低い。
だがその顔立ちは相当に整っている。
どれぐらいかと言えば.....モデル並みである。
そして柔らかそうな唇と大きな目。
まつ毛も大きい。
黒髪のボブをしている。
だけど髪の毛にはサッカーボールの髪留めが2個。
年齢に似合わない子供っぽさもある。
「.....君.....誰?」
「私?.....私は奈美子。.....東條奈美子(とうじょうなみこ)」
「.....東條.....奈美子?」
ニコッとする東條。
俺は顎に手を添えながら.....考えるが。
そんな名前には聞き覚えが無い。
だが何故こんなオッサンに頼むのだそんな事を。
思いながら、別の人じゃ駄目なのか、と聞く。
しかし.....その東條とやらはこう答えた。
「私はお兄さんが良いの」
「.....?」
「お兄さんが良いから案内してもらおうかなって」
「.....???」
そして俺の横に立つ東條。
俺はちょこんと立つその姿に少しだけドギマギする。
女子高生とオッサンって。
俺は控えめに東條から離れつつ。
盛大な溜息を吐いた。
少しだけ会社に遅れるが仕方が無い、と思いながら。
この女子高生.....何だか苦手だ。
「.....案内して下さい」
「.....分かったよ.....」
少年達が見ているし。
さっさとこの場から離れたい。
思いながら俺はそのまま案内をする為に歩き出した。
その横を少女が付いて来る。
確か姫子高校は.....東の方角だったな。
何で俺はこんな事をしているのやら。
「ねえ。お兄さん」
「.....何だ」
「.....私は魅力的?」
「.....いきなり何を聞いてくるんだ。そんな事は答えられない」
「.....ふーん。そうなんだ」
「俺が答えるとセクハラだろ。そういうのは」
ふーん。
セクハラねぇ、と言いながらニコニコする女子高生。
馬鹿なのかコイツは.....、と思いながら横断歩道を渡ったりしてからそのまま歩いて行く。
すると.....女子高生が、ねえお兄さん、とまた聞いてきた。
何だってんだ.....。
「お兄さんってば」
「.....だから何だよ今度は」
「.....私は18歳だけど結婚出来ると思う?」
「意味が分からないんだが.....お前.....」
「私は結婚するべき人が居るの。.....だから魅力あるかなって」
何なんだこの女子高生。
このまま逃げても良いんだが.....このモヤモヤが解決しなければ今日1日中.....このままモヤモヤだろうな。
それは困る。
思いながら姫子高校にさっさと行こう。
考えつつ歩を進めてから最先端の建物っぽい場所に到着した。
生徒達が登校している中で、だ。
「ここが姫子高校だ」
「.....そうなんだね。結構.....最新な感じだ」
「.....そうだな」
「.....まあ知っていたけどね。私.....この場所の事は」
その言葉に、はぁ!?、と唖然とする。
登校している生徒達がビックリしていたので声を抑えながら聞く。
それはどういう事だ、と。
すると東條は、私。本当は伊藤凪帆(いとうなぎほ)って言うの。お兄さん、とエガを浮かべて回答した。
俺は、え、と一言だけ発してから愕然とする。
「.....まさか.....お前.....!?」
「そうだね。.....久々だね。10年ぶりに戻って来たよ。約束を果たす為に」
「.....それってまさか.....婚約の?」
「.....うん。私はお兄ちゃんが好きだから」
そんな告白を.....人が大勢居る場所でするな!?
俺は真っ赤に赤面しながら凪帆を見る。
そんな馬鹿な.....10年.....嘘だろう.....!?
10年も想っていたのか!?
思いながら.....愕然としながら凪帆を見る。
「私は嘘は吐いてないよ。10年間想い続けたんだから。誰にも負けないよ」
「.....お前.....10年だぞ!?有り得ない.....そんな馬鹿な!」
「.....10年経っても100年経ってもお兄ちゃんが好きだから。.....約束は果たすよ。.....私は誰にも負けない」
「.....!」
俺は真っ赤に赤面しながら。
これ以上無いぐらいに茹蛸になりながら。
凪帆を見つめる。
その凪帆はニヤニヤしながら俺を見てきた。
そして投げキッスをしてくる。
「.....でもこの高校に用事があるのは事実だから。.....だからまあ仮にも送ってくれて有難うねお兄ちゃん♪」
「.....」
唖然としながら。
高校の中にルンルンで消えて行く凪帆を見る。
何だってんだ一体.....、と思ってしまった。
全く.....。
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