第2話 残念な美人
今日から出社だ。
昨日飛行機で座っている時間が長かったせいか、体がばきばきだった。
思いっきり伸びをして息を吸うと、気分がすっきりした。
普段は早めに会社に行って仕事をするのだが、初日で関係者への挨拶から始まるから、今日は始業に併せて出社しよう。
今日は車がまだないから、電車通勤の予定だ。
香が作ってくれた朝ごはんを食べて、兄貴に一声かけて駅に向かう。
電車を待っていると、かなりの美人がすごい勢いで走ってくる。
美人なのに寝坊したのか、なんとなく格好が雑だった。
ぼーっと眺めていると、俺の隣に並んだ。
ちらっと横を見るとやはり、相当な美人だ。
「危ない、この電車を逃すと遅刻だったわ。今日から新しい課長が来るのに初日から遅刻なんてみっともなかったから、間に合ってよかった。」
と残念な美女がブツブツ言っている
美人なのに自己管理ができていないなんて残念な人だとぼんやりと考えながら電車が来るのを待った。
電車が到着すると、人並みに押されるように電車の中に入って行く。
久々に味わう日本の満員電車に一瞬、なつかしさで感動したが、すぐ人の多さにうんざりした。
明日からは車での通勤だから今日だけ我慢だと自分に言い聞かす。
電車の動きに合わせて、隣の人の肩にあたってしまった。
痴漢だと思われてはいけないと思い、慌ててすみませんと会釈する。
会釈した際に、隣の女性のスカートのファスナーが全開になっているのに気づいてしまった。
顔を見ると、さっき走ってきた残念な美人だった。
ここは指摘すべきか、見て見ぬふりをするか一瞬悩んだ。
だが、このまま全開にしたまま会社にいくと、残念な美人がもっと恥ずかしい思いをするかもしれないと思った。
ちょうど降りる駅に着く頃だったし、声をかけることにした。
あまり大きな声で言って周りに聞こえてはいけないと、残念な美人に顔を近づける。
残念な美人が身構えたの、これで痴漢に間違えられてはいけないと思い慌てて
「スカートファスナー空いてますよ。」とこそっと教えてあげた。
残念な美人は慌ててスカートのファスナーを確認している。
全開なのを確認するとみるみる顔が赤くなっていく。
ちょうど駅についた時だったので、降りようと思ったらその残念な美人も降りる駅だったらしく、慌てて降りていく。
走り去っていく後ろ姿をぼんやりと見ていると、一瞬振り返ったが、すぐ前を向いて走って行ってしまった。
朝は時間に余裕をもたないからこんなことになるんだぞと、その後ろ姿にむかって心の中で叫び、会社に向かった。
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