コーヒーと課長とわたし~課長サイド~

KEI

第1話 帰国

久々の日本の空気だ。


北見祐樹37歳。女性用服飾メーカーに勤務。


先週、出向先のアメリカから帰国した。


アメリカは5年程いた。


今回の帰国で企画部の課長に就任する予定と聞いている。


聞くところによると、前任の課長が優しい人だったので、企画部のレベルが低下しているかた叩きなおしてくれというのが会社の命令だ。


アメリカで俺も相当鍛えられたから、どんなのメンバーでどういう仕事ができるか今から楽しみだ。


空港に迎えがきてるはずなんだけど、と周りを見渡していると見慣れた二人を見つける。


「兄貴、香。迎えにきてくれてありがとう。」と二人に近寄っていく。


「久しぶり、元気そうでなによりだ。家が決まってないから、俺の家にしばらくいるんだろ。疲れてるだろうから、早く家に向かおう。」と兄貴が半分荷物を持ってくれた。


「折角の私たちの愛の巣に転がりこんでくるなんて、ほんと無神経なところは昔から変わらないわね。」と香が頬を膨らませて文句を言ってる。


「香、悪いな。でもどうせ来年結婚するんだから、ちょっとぐらいいいだろ。それにしても。香もこの歳になるまでよく兄貴のこと待ってられたな。」


兄貴と香は15年来の大恋愛の末、来年結婚する。


俺はその家に少しだけ居候させてもらうことになっている。


「祐樹と私は同い年なんだから、あんたもそろそろ真剣に考えなきゃいけない年齢よ。最近どうなの。」


と聞かれるものの、自分で言うのもなんだが、仕事はできるが恋愛についてはさっぱりだった。


入社して以来仕事漬けで、おまけにアメリカに行っていたので、恋愛はしばらくご無沙汰している。


俺はイケメンの部類はいるようで、言い寄ってくる女はいるが、いまいちピンとこない。


適当に付き合って、私のことほんとに好きじゃないでしょと毎回振られる。


そんなわけで37歳の今も独身貴族である。


帰国早々、恋愛のことでお説教されるとは思ってもいなかった。


さっさと家を見つけて出ていかないと、この調子で言われ続けるんだろうなとうんざりしながら、兄貴の車に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る