19 紙とペンが断ち切る関係

松崎さんが戻ってくるまで


2時間は、掛かるだろう


ジョー君が「ちょっと、俺コンビニ行ってきます」


逃げるように、トラックで出かけて行った


旬と二人だ


旬が「紙があれば、貰えますか あとペンもお願いします、」


僕は、仕事部屋から数枚のA4とボールペンを渡した


僕は、それを渡すと、縁側に出た


カリカリとペンの音が聞こえた


旬は、書き終わるとそれを内ポケットに入れた



旬が、僕の隣に座り話した


「知ってます 久美子、、、 彼女がアメリカでちょっと有名なんですよ」

「彼女の作品が上映されて」

「あの日本人は、誰だって」

「最近は、配信も始まって、世界中で彼女が見れる」


松崎さんから外国の取材があるから


来週は、向こうに戻ります。


その話を思い出した


「俊介さんが気になってる家を出た理由」


「やっぱり夢を諦められなかったからです」


「舞台に出だしたのは、同じ時期なのに」


「彼女は、有名になっていく」


「俺がやっと役がもらえた頃には、」

「彼女は、映画が決まったり」


「劇団入っても、劇団作ってもダメ」

「俺もう諦めて、親の会社に入って演劇、俳優は、やめたつもりでした」


「彼女と結婚して」

「子どもが生まれて、彼女が仕事を断りだした時、正直、喜んました」

「このまま、家に居てくれたらなって」


「でも、才能あると放っておいてくれないんですね」

「すぐに復帰の話が決まって」


「そんなの見てたら」

「なんか諦められない」

「そう思いだしたら」

「家を出ちゃって」「引き返せなくなって」


「彼女に来るなって言われて当然なんです」


旬のことは、嫌いだけど、その話を信じた


「アメリカでは、どうなんですか、、」


「夢、つかめました、、」


「オーディションを受けて、小さな役は、もらったり」

「役といっても、エキストラです」

「正直、役者として引っかかりもしてません」


「生活のために、、、」

「チャンスをつかむため舞台裏の仕事もしています」


「諦められない」

これが旬の正直な気持ちなんだろう


じっと遠くを眺めていると

車がこちらに向かって来た


ジョー君じゃない


僕の車だ


松崎さんが帰って来た


久美子さんを乗せて、、、


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