17 やっかいな男


久美子さんのいない家は、静かだった


僕は、お茶を出した


テーブルの周りに男が三人


旬は、「すいません」小声だった


僕は、「どうして、ここに」率直に聞いた


旬は、小さい声で答えた


「子供に会いに来ました」


僕は、すぐに返した


「今まで、ほっておいてですか」


肩を落として体をすくめ「すいません」




ジョー君が「ちょっと待って、俊介さん」


何か言おうとした時、「ジョーは、黙って」と旬が遮った



今度は、一番聞きたかったこと


「なぜ、家族を置いて、捨てた」と言うと


また、「すいません」と


「捨てたわけじゃないんです」


理由を話せないのか言葉に詰まった



旬をこれ以上責めても


僕もいい気は、しない



二人に「出て行って」とも、言えたが千尋と香奈の父親でもある


それに闇雲に追い返すと


子供を取り返す裁判なんて起こされたら、、、


そんな事も考えた



うまく帰ってもらうためには、


旬は、子供と会えれば、、、、


それだけなのか、


それとも「久美子さんとやり直したいのか、」


「本当に子供に会いたいだけなのか」


2年ほっておいた家族に会いに来た男の考えが分からなかった



旬に聞いた


「会ったあとは、どうしますか」


また、旬は、言葉に詰まっていた


「久美子が、久美子さんが再婚することは、ジョーから聞きました」


「今、会わなければ、もう会うことは、できないかもしれません」


「確かに出て行った自分が悪い」


「会わせないと言われれば、諦めます」



彼の素直な言葉に気持ちが揺らいだ


目をつぶり、考えた


僕、久美子、千尋、香奈


みんなが幸せになるには、、、、



はっと気がついた


いや、こいつ「旬」は、役者だ


本音か演技なのか、わからない


疑いを持った


同じ俳優の久美子さんには、思ったことのない偏見だが


旬を疑った 「本当の狙いがあるかもしれないと」


やっぱり


追い返そう


二人を見ると旬の隣で


なぜか一緒にジョー君が頭を下げていた


その姿に


なぜか笑ってしまった



ここで笑ってしまうと


追い返す言葉は、出なかった


それに千尋と香奈にとって


旬は、父親だ



そう思うと


「協力は、したいけど」


「久美子さんは、了解しないよ」


「どんなに頭を下げても」


そう言うと


ジョー君が「三人で頼もう 俊介さん頼みます」


旬も頭を深く下げた


まるで兄貴と子分だ「嫌な予感がした」



やはり追い出すべきだったか


だけど、旬の企みがあるなら


奴の化けの皮を剥がしたい


そう思った

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