16 招かれざる客

煙を巻き上げるトラックが家の前にとまった


中には、ジョー君の助手席には、男が座っていた



縁側でそれを見ていた久美子は、ばっと、走り出した



車から男が降りてきた


すぐにわかった


「旬」だ


遠くからでも久美子さんの声が響いた


その怒声が聞こえないように


千尋、カナ、「アイス 食べよう」と言い


家に入った


「うん」返事をする


無邪気さが僕の胸を締めつけた


アイスを食べ出した二人に「ちょっと待ってね」と言い


玄関にまわり、少しあけた



久美子さんの声が聞こえた


「ジョー、なんで連れて来たの」ジョー君にも怒ってるようだ


「どうしたのー」「ママどこー」っと香奈が居間から呼びかけた


「ちょっと待ってねー」返事をする


この状況に


僕が「出て行く」「行かない」迷った


意気地のない男だ




久美子さんの大きな声が聞こえた


「帰ってっ」「帰って」と繰り返す声は、


「しだいに涙声だった」


その声に怒りがこみあげた


拳を握り、引き戸を「ガラガラ」と開け、外に出た


近づいていくと、ジョー君は、立たされ、


久美子さんの前で男が正座を、、、、


いや土下座の姿勢だった



久美子さんの震えた肩


「殴ってやりたい」そう思った


10秒もあれば着く距離に、


進む足は、スローモーション



僕は、旬の肩に掴みかかった


「パパー」後ろから千尋に声が響いた


振り返ると


千尋がこちら近づいてきた


香奈は、その後ろでスプーンを持ち


ジッと見ていた


掴み掛かった肩の手を引き上げ


旬を立たした



自分の震える体を落ち着かせ



少し高くなった声「とりあえず入ったら」と言った


立ち上がった旬は、背が高く、喧嘩になっていたら


やられていたのは、間違いない



久美子は、「娘をおいて行った人だよ」「絶対ダメ」「ダメ」


拒否した




振り向いて見えた横顔が見たことのない


おこり顔だった


おこる顔も綺麗だ、思わず見惚れた



久美子さんと目があい


「何、黙って見てんのよ」矛先がこちらに向いた




千尋を追うように香奈が歩いてきた


僕の足にしがみつく


久美子が「大きい声出して、ごめんね」と


千尋と香奈にあやまった


香奈は、まだ、足につかまり、こっちを見ていた


僕が抱き上げると、久美子さんに奪われた



カッとした目で僕を見て


「俊介が悪いんだからね」と言って家に入った


久美子さんは、千尋と香奈も呼んだ


良かれと思った行動がどこかに向いていくことは、


よくあることだ


彼らを家に入れると、三人がカバンを持って家を出た


追いかけると、「今日は、ホテルに泊まるわ」


「じゃあ」と言い残し


車で行ってしまった



近くで泊まれるのは、空港のホテルだ


引き止める間も無く、久美子さんは、行った


久美子さんがいなくなったことで少し安心した


その理由は、


旬とは、話してみたいと思っていたからだ


なぜ家族を置いて出て行ったか


それを聞きたかった






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