15 やめるのやめた

まだ、固まらない生活が始まって2週間


何事も、スムーズには、いかなかった


今までは、松崎さんがいる分


久美子さんに余裕があった



いまは、僕だ


役に立たないと思われたくなかった


だから頑張って久美子さんをフォローした


四苦八苦してる姿を見た久美子さんが


「頑張らないで」


「いつも通りの生活をしてください」と


優しく言ってくれた



その日は、縁側でお昼を食べた後


千尋と香奈は、食べ終わるとブランコで遊んでいた


久美子さんは、縁側で千尋と香奈を眺め


独り言のように話した


「あのね」「あの映画の後、仕事やめようと思ってたの」


「香奈が生まれて、すぐに旬は、出て行って、、、、、」


「その時、まだ、千尋も2歳だったし」


「あの時は、復帰に一生懸命だった、、、、」「疲れもしたけど、、」

「二人のために頑張ったの」

「でもね 今思うと」「自分のために頑張ってただけで、、、、、」


「香奈のオムツをかえて気がついたの」

「千尋のオムツって誰が変えてたんだろうって、、、」

「ほんと、」「辞めたくなった、、、、、」

「やめて遠くに行って、まだ叶えてない夢でも叶えようかなって」


「でもね」

「俊介くんに出会って」

「辞めるのやめた」

「なんか楽しくなっちゃって」

「そうしたら、松崎さん、が少し休むって頑張ってくれて」

「しばらく、みんなで一緒に居れるようにって」


「あのまま、辞めてたら、」


「松崎さんにも会えなくなるのかな、って、、、、」


「ほんと、やめなくてよかった、、、」


「ほんと」


「俊介君、聞いてる」


声のトーンが上がった



僕は、「聞いてなかった」とトボけると


「あははは」といつものように笑ってくれた



「俊介くん ブランコ押してー」


千尋が呼んだ


サンダルを履き、ブランコを押していると


遠い向こうから煙が見えた


近づいてくる煙の中には、トラック


こっちに近づいてきた


見覚えのあるトラック


ジョーくんのトラックだ




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