14 男前ジョー


出会って8が月


今日から4人の暮らしが始まる


住むにあたり僕なりに準備をしていた


DIY雑誌を片手に


沈み込んだ床と歪んだ扉の修理をした


歪んだ扉は、閉まるようになり


床は、少し斜めだが上出来だ


気を良くして水回りの修理にかかった


出来るところまでは、やったが、水漏れが見つかり


そこは、プロにお願いした


あと、庭にブランコを建てた


これは、まだ秘密だ




まだ、千尋と香奈の先を考えると


向こうとの行き来の生活は、続く


僕も、いつまでもこの仕事が続いていくとは、思っていないが


ここで住む間は、快適に過ごしてほしい



いつも会う3人だけど、


今日は、ちがった気分だ


家の鍵を閉め車に乗った


久美子、千尋、香奈を迎えにいく



ここは、都会より風がよく通る


晴れた暑い日でも風が吹くと心地いい



「さー」っと気合を入れ


家を出る


空港まで1時間


空港に着き


3人を車に乗せ家に向かう



角を曲がると遠くからでも


家の前にトラックが停まっているのが


見えた



久美子 「ジョーくん もう着いてる」



全夫、旬の話に出てきた友人ジョー


あの日の夜、全夫「旬」の話で何度も聞いた名前だ


旬の作った劇団に入り解散まで演劇を続けていた友人で


今は、家業の工務店で働いている



古く錆びたトラックには、工務店の名前が入っていた



車に近づくと、タオルを巻いた長髪の男が


トラックから降りてきた



影に入り顔は、よく見えないがガッチリした体格だ



こっちに近づき


お互いの顔が見えると


「久美子ちゃん」そう言うと


大きな眼で僕を見た


「おー、あんたが噂のー」




どんな噂なのか、気になるが


ジョーは、僕の手を握った


「よかったー」「よかったー」と強く握った


多分、久美子さんとのことを祝ってくれていると思う


数少ない秘密の関係を祝ってくれる人物だ



「ありがとう」そう言うと


「うんうん」目を潤ませていた


この涙は、久美子さんとの付き合いの長さなのか


目の潤んだジョーに


「遠かったでしょう」と言うと


「遠い、遠い」と返した


そうだろう、車で丸一日かかる距離だ



荷台には、段ボールが10個と


新品のベッドにタンス


組み立て式だ


荷物は、それだけだったのに少し驚いた


みんなで荷物を降ろすと家に荷物を入れ


すぐに引っ越しは、終わった



子供のために綺麗にした部屋に


千尋と香奈は、喜んで


出来上がったベッドの上を飛び跳ねた



ジョーが家の修理箇所を見て


「俊介さん、ここ自分で直してるんだって」


「すごいよー」「すごいよー」


「よく、ここまでやったねー」


と張り替えた床や綺麗にした部屋を見まわした




直感的に「ジョー君とは、仲良くなれる」


そう感じた




そのあと、みんなでちょっと遅い昼食をとった


千尋と香奈は、見つけたブランコに夢中だった


彼には、今日は、泊まってもらおうと声をかける


「泊まって行かない」「布団もあるよ」


久美子さんに「酒グセが悪いからダメ」っと意表を突かれた



この距離を走ってきてくれる友人を追い返す久美子さん、、、、、


ジョーも「新婚さんの邪魔は、しません」「明日も帰ったら仕事なんで」


笑顔でトラックに乗り込んだジョーに


「また、来てください」と言ったが


その声は、


排気ガスに消された







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