第004話 雷晶が欲しい
リェリィが衣服を身に着けたのを見て、イクサはふと疑問を口にした。
「どうしてそんな格好なのだ?」
彼女は自分の衣服を見て首を傾げる。
「似合ってない?」
「そういう問題ではない。なぜお前のように紡流を持たない人間が、半袖半ズボンで外に出たのかと聞いている」
しかし紡流を持たないリェリィの体の性質を鑑みると、それはちぐはぐな格好と言えた。
「いやあ、正直、箱入り娘で今まで勉強ばかりして育ってきたから、その辺りの知識がなくて。あはははは」
笑い声とは裏腹に、紅い瞳は虚ろだった。どうやら自分の教養のなさに自分自身が参っていると言った様子である。
「ところで、さっきはごめん。反射的に、つい」
「ならば今度反射的につい、お前の首を刎ねるとしよう」
「本当にすみませんでした。命の恩人にとても無礼なことをしてしまいました」
「大げさに謝れと言っているわけではない。しかし、確かにお前には貸があるからな」
顎を撫ぜて考える。
「そうだな。金で解決するか、もしくはお前の身を俺に売るか」
「身を売る!?」
「先も言ったが、俺の紡流は無限だ。が、そのせいで体調が良くなくてな。お前に触れていると少し楽になる」
「そうなんだね。じゃあ、二人で暮らすってこと?」
「端的に言えばそうだが、対等なパートナーだとは思うなよ」
「うーん。でも僕、ずっとここに居るわけにはいかなくて」
「では金だな。100万ディルでどうだ?」
「ディルって、デールのこと?」
「そうだ。通貨がデールと言うことはアマリスマスの出か。それで、用意できるのか?」
「それが……」
リェリィは自分のズボンのベルトループから垂れている腰袋を開いて見せる。
袋の中は空だった。
「そのペンダントは?」
「これは姉さんから預かっているもので、渡せるようなものじゃあないんだよね」
「お前に拒否権があるようには思えないのだがな」
「ごめん」
しゅんとなるリェリィにイクサはため息で返す。
「家に帰れば100万デール用意できるか? お前はともかく姉は金持ちのようだしな」
「うーん、帰れば、できる、ね」
やけに歯切れの悪い言い方に眉をひそめるイクサ。
「でも、帰るためには
「そんなもの、あると信じているやつの方が少ないぞ」
「でも、それ以外方法がなくて」
「噂話を信じるなら、
リェリィはがっくりと項垂れた。
イクサはしばらく思案を巡らせ顎を撫でたあと、彼女に背を向けて道具の準備をし始めた。
「なにをしているの?」
「出かける準備だ。これから俺の仕事をお前に手伝ってもらう。洞窟に行くからな。運が良ければお前の目当ての品を手に入れることができるかもしれない」
リェリィはイクサに言われる通り荷物を運び出すのであった。
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