オマケ・イベントの……諸事情に消去されました
何が起こったのか?
僕の記憶は欠けているが、断片を繋げてここに書き記しておこう。
確か、伏見さんとカラオケ大会に出た。
ステージに上がり、彼女がマイクを握ったまではハッキリと覚えている。
無表情であるはずの――表情の表現するシステムを積んでいない――彼女の笑顔が見られたような気がした。
そして、彼女が第一声を放ったときだ。
記憶が飛んだ。
気が付けば、視界には秋空が広がっていた。
恐らくその場で、そのイベントにいた人達で立っていたのは、伏見さんぐらいであろうか?
「何があったの?」
「どうなっているんだ!?」
倒れていた人達が、気を失った人達が頭を振りながら立ち上がり、立ち上がっていく。
何があったのか、状況を確認したくて周りの人が、ざわめきはじめた。
僕も立ち上がったが、その代わりに伏見さんが崩れ落ちた。
「……………………………………そんな」
伏見さんの落胆する声が聞こえたような気がする。
何があったのか?
考える前に、変な臭いがしはじめた。
――煙クサイ。何だ!?
消防車か、パトカーか、サイレンが鳴り出していた。
そして、大通りの端のほうのビルで煙が上がっている。
――火事だ!
『皆さん。スタッフの指示に従って下さい』
※※※
結局、大通の市のイベントは火事のために中止となった。
しかし、いったい何かあったかと僕なりに整理した。
僕の推理では……ゴメンナサイ。ネット情報をかき集めました。
ともかく、出した結論は、伏見さんということだ。
人造人間の発音装置と、イベントで使っていた音響機器がハウリングを起こしていた。そして、ほぼ音波兵器と化したスピーカからの音で、その場にいた人達が全員気絶してしまったのだ。
そもそもテレビに人造人間が出ていない。テレビのスピーカがハウリングを起こすからか? そういえばカラオケ屋とかに、小さく『人造人間の方は注意して下さい』と書かれていたような……気がしてきた。
で、ビルの火災はよく分からない。
それよりも聞いて欲しい。
翌日の学校に、あの元気な鵜沼さんが登校してこなかった。
担任の説明では風邪らしい。そうそう一夜先輩もやっぱり風邪で休みだった。
まあ先輩はどうだっていいが、あの鵜沼さんが風邪を引くなんて!
――おかしすぎる。
僕の知らないところで、何か強い力が働いているような。
肝心の伏見さんも登校しなかった。
確かに憧れのカラオケで、音響機器を兵器と化して、人に危害を与えたのはショックだろう。
しかし、問題なのはカラオケが無かったことにされているんだ。
火事があった事は確かだ。しかし、倒れた原因は、火事によるガス爆発で吹っ飛ばされたことになっている。
おかしい。伏見さんの原因のはずなのに……
そうなるとビル火災は、気を逸らすための工作ではなかったのか!?
これは何かある。
僕は情報を求めてSNSに投稿してみた。だが、結果はどうだ。
『何言っているんだ?』
『イベントでガス爆発があったんでしょ?』
『カラオケ大会? そんなのあったけ?』
返信にはそんなのばかり。
おかしい。あんなことがあったのに、誰も覚えていないなんて……
「アサヒちゃ~ん。お客様よ」
1階から母親の声が聞こえてきた。高校生にもなって、『ちゃん』付けは辞めてくれと、母親に何度も言った。だって、相手に聞こえたら恥ずかしいじゃないか! しかし、母親には――純粋な吸血族なのもあるので――逆らわないようにしている。色々と勝てないから。
しかし、時刻は9時過ぎ。結構遅い時刻に僕にお客さんとは誰なのか――
きょうを読むひと~イベントにご注意~ 大月クマ @smurakam1978
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