第38話 異能について
朝食を取った異能部隊は車に乗り、一面草原の広い場所まで移動した。
「この辺りでいいだろ」
空は車を止めて異能部隊の面々が車から降りる。
「迎えが来るって言ってたけど、どれくらいで来るのかしら?」
「どうでしょう?月影ならば今日中に来てもおかしくはありませんが。そもそも迎えがどんなものか……」
「月影は何でもありだからな。とりあえずはのんびりと待つしかない」
真は車から椅子を取り出し周りに並べる。
「だが魔物が襲ってくる可能性はあるからな。警戒はしつつ、ゆっくりしていろ」
セイラ、いばら、姉川は椅子に座り。空は車内でパソコンを開く。
「そういえば、前に見たセイラの真価解放。ガトリングガンだったわよね」
「はい。本来は違いますが」
「前にもそう言ってたわよね。それってどういうことなの?」
「それなら俺も聞きたいことがある。お前らが持つ異能のこと、同じ部隊にいる以上どんな物なのかは理解しておきたい」
いばらと空からの質問。
「そうだな。ならまずはセイラの異能から」
「イエス。では私の異能について説明をします。異能名は【
セイラは太ももに括り付けていた金属板を手に取る。
「その力はありとあらゆる物質の合成と分解。そして形状の変更」
セイラは【形状変換】を使い、金属板を二つに分け、形をナイフに変える。続けて二つのナイフを合わせて一つの金属板に戻した。
「今お見せした通りの力です。形状を変えることよりも合成、分解の方が魔力を使います。現状私の力が通用しない物質はありません」
セイラの実演を踏まえた説明が終わる。
「じゃあ次はロウガ」
「『はい。我の異能は【
ロウガの説明はこれで終わる。
「次は……いばらの異能も一応説明しておくか?」
「自分でもよく分かってない力なんだけど、まぁ分かってる範囲で。私の異能は【
「そうだな。けど帰ったらどれくらいの傷でも力が及ぶかは確認すると思うぞ」
「それは、嫌かも」
「まぁさすがに無理にとは言わないけどな。それにトップだってお前が嫌がることを無理にやらせることは無いだろ」
いばらは安心したように息を吐いて説明を終える。
「じゃあ最後に俺だな。異能は【
「イエスマスター」
真はセイラに向かって手を伸ばす。
「【真価解放】」
その瞬間、真とセイラが青白い光に包まれる。だがその光はとても微弱な物。
「光が少ない?」
【真価解放】を体験したことのあるいばらは光の少なさに疑問を持つ。
「これは感情が高ぶってない状態で力を使った結果だ。この状態だと能力は僅かにしか上がらない。俺の力は相手の思いや感情を力に変える物だから何もしていない状態だとこんなものだ。それともう一つの力」
真は手を上げる。
「【
真の手に青白い光が集まり、真の手には鎌が現れる。
「これが【真価武装】。セイラの真価、本性、性格を形にしたものだ。ただ簡易版だと、」
真は鎌を地面に向かって振る。地面と衝突した瞬間、鎌はあっけなく消滅する。
「張りぼて程度の耐久性しかない」
「なるほどな。ちなみに通常通りに使うとどうなる?」
「【真価武装】に相手の本性を映した能力が付与される。それといばらの疑問、セイラの【真価武装】が違うことだが、セイラの場合はそれ自体がセイラの真価なんだ」
「どういうこと?」
いばらだけでなく、空や姉川も?を浮かべている。
「とりあえず今分かってる【真価武装】についてまとめるぞ。まずは俺が使う【真価武装】」
セイラ:鎌
能力:外傷無く相手の意識を刈り取る
ガトリング
能力:魔力の持続する限りリロードなしで弾丸を発射する。
ロウガ:超身体能力強化
能力:身体能力、五感の強化。
いばら:薔薇の剣
薔薇のツタを操る。
「次は相手が使う【真価武装】」
セイラ:ナイフ
能力:切れ味上昇。
ロウガ:超身体能力強化
能力:身体能力、五感の強化。全身、体の一部を僅かに巨大化させる。
いばら:薔薇の鞭
能力:薔薇のツタを操る。
「こうして聞くと、セイラだけなんだか違うわね?」
「そう見えるよな。けど実は同じなんだよ。セイラの真価、それは素直さ」
「素直さ?」
いばらはセイラの顔を見る。
「何ですか?」
「いや、意外というか、何というか」
「まぁセイラは傍から見ると感情が分かりにくいからな。素直さと言ったがもっと言うなら純粋とも言える。だからこそ俺が望む形に真価武装を変えることが出来る」
純粋で素直。そして真に向けている大きな感情。これが合わさることによりセイラは真の望む武器を作り出すことが出来る。
「ただ一度使うと一日はそれ以外の形には出来ませんが」
「そうなの?どうして?」
「一度使うとその武器のイメージが定着するんです。なので睡眠を取り、一度イメージを薄れさせることが必要なんです」
「なるほどね。ちなみに鎌とガトリングで能力が違うのは?」
「それもイメージの差ですね。マスターの二つ名、『死神』。そこから連想される武器である鎌。そして『死神』は魂を刈り取る。そのイメージをそのまま表れたんでしょう。ガトリングガンは特にイメージ出来なかったのでそのままです」
「そのままって。でも確かにセイラのナイフも切れ味上昇だし。素直っていうよりもシンプルって感じがするけど」
「シンプルな方が分かりやすく扱いやすいでしょう。いばらの場合は性格がそのまま見た目や能力に出た感じですか」
「ちなみにセイラには私の性格どう映ってるの?」
「そうですね。聞きかじった言葉で表すならば、ツンデレですね」
「ツン、デレ?」
いばらには聞き覚えの無い言葉だったんだろう。いばらは首を傾げる。
「簡単に言えば、素直になれない人の事です」
「つまりセイラとは反対ね」
「考えてみればそうですね」
二人はバチバチと目を合わせる。
「お前ら何で睨み合ってるんだ?」
「やめとけ真。女の戦いに口を挟むな。……とりあえずお前らの能力は大体把握した」
その後、空と姉川はパソコンで作業をし、真とロウガは運動を、いばらはセイラに手ほどきを受けて格闘術もどきを習う。
そして時間を潰していると、上空に黒い飛行物体が近づいてくる。
「……来たか」
「嘘っ、あれが?」
「さすがは月影ですね」
異能部隊の目の前に、巨大な黒い飛行機が着地した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます