ハエルヌンによる春(8)
ラウザドからの帰路、執政官[トオドジエ・コルネイア]の豪華な邸宅でサレは饗応を受けた。
サレの杯に酒をそそぎながら、執政官が言った。
「坐っているだけで
「その代わり、お互い、悪名高くなってしまったな」
しみじみとサレが口にすると「何を今さら」と執政官が笑った。
「執政官。きみもそれだけの苦労はしたということだ。金は何に使うつもりだ?」
「さいきん、若い妾を囲い始めたのはいいが、宝石好きの金のかかる女でね。きみは何に使っているのだ。賄賂を受け取っていなくとも、ずいぶんと潤っているのだろう?」
「ホアラの整備に回している。道や水路を舗装したり、学問所をつくったり。コステラで出来なかったことをホアラでやっている。私の理想とする都市にホアラを変えてみせるよ。私の生きているあいだに、間に合えばよいのだが……。息子には息子の考えがあるだろうし」
そのようにサレが語ると、「立派なことだ」と執政官がうなづいたので、「いや、きみ、そういうことじゃないよ。趣味なんだよ。そう、趣味」とサレは応じた。
すると、執政官は「なるほど、立派な趣味だ。しかし、少し危険な趣味でもある。私のような穏やかな趣味をきみも持つべきだ」と忠告してきた。
「考えておくよ。しかし、生来、女にさほど興味がないうえに、さいきんは元気がなくてね」
サレが肩をすくめると、「おいおい。タバコの吸い過ぎじゃないのかい?」と執政官が心配するそぶりをみせた。
「それもあるかもしれないが、どうも
「まあ、何でもいいが、野心を抱いていないことを示しておくにこしたことはない。ほどほどに賄賂を受け取り、美しいだけの女にうつつを抜かしていると思われるのがいちばん楽だよ。屋敷の中へ閉じ込めておけば、たいした悪さもしないからな」
友人の忠告に、「それはそうだ。考えておこう」とサレはいちおう同意してみせた。
すると、「とにかく、用済みになった
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