いくさのあと (5)

 長く続いた七州の混乱に一区切りがついたことを受けて、執政官[トオドジエ・コルネイア]が祝意を述べるため、近北きんほくしゅうのスグレサへ出向いた。

 歓待かんたいを受けた執政官は、近北公[ハエルヌン・スラザーラ]より、「これで私の仕事は終わりだ。これからはあなたの時代だ」と言われて、上機嫌になったとのこと。

 スグレサに滞在中、執政官は北州公[ロナーテ・ハアリウ]に面談を求めたが、病気を理由に断られた。贈り物は受け取ってもらえたが、そのうちの高価なものは、あとでじょうと共に返却された。

 執政官は、りょうさいどの[ウベラ・ガスムン]と今後のことについて、時間をかけて話し合い、意見のわせを図ると、近北州を立った。


 スグレサの帰りに、休暇を兼ねて、執政官がホアラに滞在したので、サレも連日もてなして旧交をあたためた。滞在費の代わりというわけではなかっただろうが、「持って帰ってもしかたがない」と、北州公に贈る予定だった宝物ほうもつを執政官がサレにくれた。

 ふたりで昼間から飲んでいた時、執政官が「近北公の後ろ盾がなければ、私は何もできないよ」とぼやいた。

 それに対して、「さいきんは前にもまして気分屋だ。両宰どのにうまくづなを握ってもらうしかないな」とサレは答えたものの、新しい西せいどの[オリーニェ・ウブレイヤ]の台頭で、公と両宰どのの間に隙間風が吹きはじめていた。

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