沈黙、そして(6)
ここら辺の話は、さすがに北左どのもいくさびとであったので、淡々と進み、寝返る直前にまとめて殺すことに決めた。
上の話が終わり、北左どのが席を外したところで、高家どのの身の置き場についての話になった。
「北左は大丈夫だとは思うが、万が一のことがある。私はスグレサに戻ることにする」
「ここがだめだと
サレが心配すると、高家どのは首を横に振った。
「北左の前では彼を不安にさせるので言えなかったが、私は
やや間を置いてから、「護衛をつけられては?」とサレが提案すると、「私をだれだと思っている。おまえが西で泥水を
高家どのの言に、サレが黙って
「と言いながら、北左のところへのこのこと出向いて来たのだから、私の言葉には説得力がないな。まるで
返答に困る話に、サレが、「なぜ、そのようなことをわたくしに?」とたずねたところ、「なに、いくら私でもひとりでは泳いでは行けぬからな、これからの
北左どのが戻って来ると、高家どのは適当な言い訳をして、屋敷から出て行った(※1)。
※1 屋敷から出て行った
理由は先に述べたものと同じだが、本回顧録には、十月六日のルウラ・ハアルクンの挙兵から十日に行われたバラガンスの戦いまでの期間について、サレの周辺以外の動きがほぼ記されていない。
よって、読者の便宜を考えて、以下に、その期間における近北州の各管区および諸州の動きについて補足する(すでに知っている者は読み飛ばすように)。
〇
・東管区
東管区はほぼハアルクン(ポウラ)一派が制圧したが、ルウラ・ハアルクンの配下であったオウレリア・ウアスサ(大ウアスサ)は、彼が代官を務めていた土地に
ウアスサ家は戦後、栄達を果たし、一躍名族化する。ウストリレとの戦いで活躍した小ウアスサはオウレリアの孫にあたる。
・西管区
近北州の穀倉地帯であったウブランテサは、スグレサに次いでハアルクン一派が占領を目指した重要拠点であった。
しかしながら、
なお、
・南管区
スグレサを
その報告を受けたハエルヌンは、「老公(コイア・ノテ)に襲われた時の大公(ムゲリ・スラザーラ)の心持ちを味わったよ」と、
・北管区
ポウラ・サウゾが東管区の兵を侵入させたため、北管区は一時的に混乱状態へ
・マルトレ領
サウゾの甘言とハエルヌンに対する
〇各州
・西南州(バージェ領含む)および東南州
サウゾと結びついた塩賊が蜂起し、その対応のために、近北州への助勢ができなかった。
なお、ハアルクンは塩賊と与することを良しとしておらず、サウゾら側近が無断で交渉を進めたことが各種史料にて明らかとなっている。
塩賊挙兵の一報を聞いたハエルヌンは、「ノルセンがしたり顔で何か言って来るだろうよ。
・東部州(ハアティム領含む)
モルシア・サネとゾオジ・ゴレアーナが不穏分子をよく抑え込み、民衆もそれに協力した。
・遠北州
ハアルクン一派の動きに合わせて、対近北州強硬派が、病身の
・近西州
ロアナルデ・バアニ自らが精鋭千騎を
・遠西州
州内の混乱のため、とくに動きはなかった。
〇ルウラ・ハアルクンの動き
サウゾら側近の説得に失敗したハアルクンは、「きみたちがそうしたいのならば」と挙兵に賛同し、連判状に
しかしながら、寝返る代わりにルイセへ対して、代官地の安堵を約したことから亀裂の生じていた側近たちとの関係は、ハエルヌンの助命と、
ハアルクン側は一枚岩ではなかったうえに、側近たちは領地獲得以外の事柄への感心が薄く、人心は最初から離れていた。
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