どれほどの土地が人にはいるのか(6)
サレもいろいろと工作をして、不穏な空気のただよう近北州には近寄らないようにしていた。サレもばかではなかったのだ。
しかしながら、非常に間のわるいことに、
公もお忙しいだろうからと、事後報告で事を進めようとしたのがまずかった(※1)。
※1 事後報告で事を進めようとしたのがまずかった
近北州が混乱している状況なのだから、おとなしくホアラの行政に専念していればよかったものを、サレはなにを考えたのか、塩賊を刺激する行動を独断で取った。
ハアルクン一派への対応で手一杯であった中、寝ている子を起こすようなことをされたので、ハエルヌンだけでなく、ウベラ・ガスムンの機嫌まで悪くなった。
この件を受けて、「ノルセン・サレは賢い男だが、どういうわけか、塩賊がからむと途端に頭が回らなくなる」という、後世に残る有名なサレ評をガスムンが残している(塩賊の代わりにウストリレを当てはめる者もいるが、そのような発言をガスムンが言った記録はない)。
この回顧録からもわかるとおり、サレという人間はきわめて複雑な人間であるが、その評価の
生理的な嫌悪感を何かに抱いてしまうと、理性や損得勘定が飛んでしまうところがサレにはあった。
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