地にうずもれて(9)

 ホアラに戻ったサレは、酒宴の出来事をポドレ・ハラグに告げた。

「しかし、ルウラ・ハアルクンは、うつくしくて、よく切れる刀だ。いくさがなくなり、刀を振るう必要がなくなった今、近北公[ハエルヌン・スラザーラ]はその刀をどうするつもりなのだろうな?」

 サレがねんを口にすると、「まだまだ、武の面で近北公を支える必要があるかと……」とハラグが答えた。

「必要のなくなった、うつくしい刀。自分に刃が向くかもしれない、うつくしい刀。なにより、ハエルヌン・スラザーラはうつくしいものに興味がない……」

おっしゃられていることがよく分かりませんが、こう兎死とししてそうらぬ、というやつですか?」

 独り言を口にしていたサレに、ハラグが他人事のように言ったので、サレは彼をたしなめた。

「おいおい、困るよ。おまえのあるじである私、ノルセン・サレも、そのいぬの一匹だと思われているかもしれないのだぞ、近北公に」

「失礼しました」

「しかし、まあ、そう思われていたとしても、私にできることなど、ほとんどないがな」

「成り行き任せですか?」

 ハラグの言に、「恐ろしいことにな」とサレは肩をすくめた。

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