森の中をさまようように(8)

 大いくさを前に、塩賊をひきいるルンシ[・サルヴィ]は、自分たちが動くのはいくさが終わってからだとばかりに、静観を決め込んだ。

 近北公[ハエルヌン・スラザーラ]はルンシが中立の立場を取ることを確約したので(※1)、とりあえずは放置することにした。

 万が一、オアンデルスンとのいくさに負けた場合、西へ撤退する我が軍に塩賊がきばいて来るのは必定であったから、サレはその点から危惧を公へ伝えたが相手にされなかった。

 それどころか、ルンシとの約定の書状について、塩賊側の要望により、サレは裏書をするように命じられた。

 サレとしては、忌々いまいましいこと限りなかった。



※1 ルンシが中立の立場を取ることを確約したので

 ハエルヌンとサルヴィが直接会って約定を結んだとする説もあるが、傍証に欠ける。

 この頃から、近北州と塩賊との間ではやりとりが増えるが、反塩賊志向の強いサレはその交渉から外されていたようだ。

 逆に塩賊としては、散々痛い目に合わされていたサレの動向が気になったようで、約定書に彼の裏書を求めるなどの対応を近北州側に求めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る