花駆ける春(10)

 新暦九〇三年初冬一月。

 近北公きんほくこう[ハエルヌン・スラザーラ]に新年のあいさつをしたところ、サレは特別な印の押された棒金を十本拝領した(※1)。

 サレはその棒金を、自身の重臣たち、執政官[トオドジエ・コルネイア]、オルベルタ[・ローレイル]に分け与えた。

 荒地を去ることが決まっていたサレは、家臣や土地の有力者たちを集めて、宴会を開いた。

 このとき、重臣たちの家族も招いたのだが、ポドレ・ハラグの妻が来ていなかった。彼に問うと病気で来られないとのことだった。

 家宰のハラグはサレの片腕であったので、彼は深く心配したが、いついかなるときでもそうであるが、心配するだけでは何の意味もなかったのだった。



※1 特別な印の押された棒金を十本拝領する

 現存せず。何の印が押されていたのかは不明。サレの勘違いか。

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