第七章

花駆ける春(1)

 新暦九〇一年初春四月。

 サレにまた女児が生まれた。サレの長子オイルタンにかける期待はさらに高まった。

 近北公[ハエルヌン・スラザーラ]に呼び出されたサレは、祝いの棒金を渡されながら、次のように言葉をかけられた。

「また、女か。おまえは人を殺め過ぎた。その報いだな……。まあ、血縁は大事にしろ」


 この頃、東南州と東部州の対立が激化し、再度のいくさが始まっていたため、公は始終機嫌がよくなかった。

 東部州の圧迫を抑えきれない東南州に対して、「東南の弱兵が」と公は吐き捨てた。

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