北へ(7)
サレは
東左どのは
近北州で、いくさびとの鏡と呼ばれている人から、そのような目で見つめられると、サレなどは我が身恥ずかしさから、つい、目をそらしてしまうのであった。
東左どのとは、彼と「デウアルトの
サレと話す時は、常に温和な人物だったが、一度、いくさ場へ立てば、感情をむき出しにして、部下を
これまた年の瀬、サレが近北公[ハエルヌン・スラザーラ]に呼び出されたので伺候すると、東左どのとの話し合いの最中であった。
東左どのの話を聞いている公は、常よりも居ずまいを正して、話の腰を折るような
それに対して、東左どのは、ほほ笑みながら、ときおり冗談を交えつつ、用件を伝えていた。その間、公は真顔のままで、冗談に応じることもなく、ただただ、話を聞いていた。
東左どのが退出すると、公がぽつりと漏らした。
「私には弟がいた。東左に討たれて、もうこの世にはいないがな。討てと命じたのは私だから、私が殺したようなものだが。まあ、やらなければ、こちらがやられていただろうから、仕方のないことだった」
サレが言葉を返さないでいると、しばらくの沈黙後、公が言葉をつづけた。
「私とおまえはどこか似ている気がする。おまえは兄が嫌いで、私はハアルクンが嫌いだ……。いや、嫌いというのは言い過ぎだな」
「私は兄が嫌いではありませんでした。……とくに好きでもありませんでしたが」
「それは、苦手だったということではないのか。それとも関心が薄かったのか。無関心というのは、嫌い以上の感情だぞ」
言葉に詰まったサレに対して、公は「まあ、いい」と言ったのち、次のように語った。
「ルウラ・ハアルクンはな、死に方と自分の死んだ後の名声にしか興味のない男だ。自分に思うところのある
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