第六章
北へ(1)
西南州のコステラから
結局、ひと月近くもかかって、近北公[ハエルヌン・スラザーラ]の元へたどりついた(※1)。予定を大幅に過ぎたことについて、近北公は不満を漏らさなかった。
公女の一行は、旅の途中でホアラに滞在した。
サレが顔見知りの長老に話を聞いたところ、タリストン・グブリエラによる軍事拠点化が進んでおり、その費用のために税は重たくなったが、代わりに治安はよくなったとのことだった。
長老が「何とかやれています」と言ったので、サレは「それならばいい。むりをしてまで、ここに戻るつもりは私にはない。私は孝悌の情が欠けているのかな?」と問うた。
それに対して、長老は次のように言葉を返した。
「それはわかりませんが、いまは、そちらのほうが助かります。時が巡り、無理をせずに、あなたさまが戻られる日が来るのならば、それ以上にめでたいことはないでしょう、わたくしにとって。あなたさまがここから去られた時、どういうおつもりで戦わずに兵を
その後、近北州に到着した。
公女の第一声は、「都に比べて乾燥しているな。あと、雲が近い」であった(※3)。
※1 近北公[ハエルヌン・スラザーラ]の元へたどりついた
道中で見聞したことを、ハランシスクは「旅行記」にまとめており、各地の風習や特産品を考察している。
※2 あなたさまに感謝しております
以下、サレが九〇二年にホアラの代官となるまで、本回顧録の記述は少ない。それは、本書が
※3 公女の第一声は、「都に比べて乾燥しているな。あと、雲が近い」であった
以下、近北州で過ごした日々の叙述が続くが、日付が
ハアリウに近北州時代の思い出を、おもいつくままに語っているような書き方である。
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