第五章
権威権力 (1)
新暦九〇〇年一月十三日。
この国母[ダイアネ・デウアルト一世]が崩御された日に、彼女の即位から九百年を経ることを記念する祝典が、
その後、庭に七州の代表が呼ばれ(※1)、改暦の
代表たちは改暦について、口ぐちに称賛の意を示し、万歳の声が上がった
合わせて、引き続き、国主が幼年であることから、ジヴァ・デウアルトが摂政を留任することが、わざわざ伝えられた(※3)。
そちらについては万歳どころか、讃する声も出なかった。摂政は大いに
祝宴には近西公[ウリアセ・タイシェイレ]が出席していたが、大貴族というものはそういうものなのであろうか、彼も長広舌のきらいがあり、後ほどサレは近北公[ハエルヌン・ブランクーレ]から、「話が長すぎて死ぬかと思った」という書状を受け取った(※4)。
※1 庭に七州の代表が呼ばれ
これは誤りで、この時の遠西州は使者を寄越せぬほどの混乱状態に陥っていた。
結果、改暦の周知も大幅に遅れたが、
※2 改暦の詔が発せられた
改暦の建白は宮廷の天文学者の連名により出され、建白書にもハランシスク・スラザーラのなまえはなかったのだが、結局、実際に合わせて、新しい暦はスラザーラ太陰暦と一般に通称された。
スラザーラ太陰暦が正式の名として、宮廷に採用されるのには、ハランシスクの死後、彼女の業績を顕彰するときまで待たなければならなかった。
※3 わざわざ伝えられた
このジヴァ側の動きから見ても、ブランクーレの摂政交替の動きは事実であった可能性がある。
一説には、摂政着任を打診されたトオドジエ・コルネイアが気概を見せて
そのようなブランクーレの動きに対して、うわさ好きの都人に悩まされていたこともあり、五十六世即位時に摂政着任の儀を済ませていたのにもかかわらず、ジヴァは各州の代表の前で念押しをせざるを得なかったのであろうか。
※4 「話が長すぎて死ぬかと思った」という書状を受け取った
タイシェイレのケイカ・ノテ宛て書状には次のようにある。
「近北公を前にして、あまりの緊張のために、自分でも何を言っているのかわからない話を、早口で長々と話してしまいました。ふと気がつくと、公が鋭い目でわたくしをにらんでおられましたので、一瞬、殺されるかと思いました。ケイカどのも公と話される時はお気をつけなさいませ」
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