亡霊 (5)

 来年の婚儀を残し、都でやるべきことをおおむね片付けたサレのもとに、各所から胃薬が届いた。

 サレの胃痛の話は都の外にまで広がっており、忌々しいことに、道々で、サレ御用達の薬を売る者が現れる始末であった。

 葬儀が終わったくらいから、胃の調子はもとに戻っていたので、サレにとっては無用の長物であった。

 ウベラ・ガスムンなどのごく一部の友人をのぞいて、他人からもらった薬を飲む気はサレにはなかったので、年末の掃除の際に、薬を庭で焼き捨てさせた。

 すると、悪臭と煙が屋敷だけでなく、通りまで覆った。

 サレは汚名をまたひとつ増やした。

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