後継者たち (四)

 鳥籠[宮廷]の用件はつまらぬ内容であった。サレが返答を与えると、使者は一通の書状を取り出した。

 それは、[オルネステ・]モドゥラ侍従からの紹介状であり、使者は西宮せいぐうに属する者であった。

 使者には長広舌の癖があった。サレは辟易へきえきし、かつ、強い眠気に襲われたが、相手にわるい印象を与えたくなかったし、また、待たせたこともあり、我慢して話を聞いた。

 しかし、あまりに耐えかねたので、気位の高そうな相手の機嫌を損ねぬように追い返す良い方法はないかと考えた結果、オヴァルテン・マウロのなまえを出した。

 すると、「まえぐんかんどのがお待ちなのですか。そう言えば、いらっしゃいましたな。それは失礼した。話の続きは別の機会に」と使者が口にした。

「改暦を早急に進めることは万人の利に適い、宮廷の権威を高めることにもつながります。前の大公[ムゲリ・スラザーラ]のご葬儀が終わり次第、お話のつづきをお聞かせください。それまでになにかあれば、ポドレ・ハラグという者に……」

 そう言うとサレは従者に目配せをして、金の入った小袋を使者の前に置いた。

「ご足労頂いた上にお待たせして申し訳ありませんでした」

 頭を下げるサレに使者は頭を上げるように言い、金を巡って形式的なやりとりがあったのち、彼は小袋を懐に収めて席を立った。

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