都、美しく燃えて(四)

 翌八月十一日。

 じょう洛軍らくぐんのマルトレ入城が、サレの耳に届いた(※1)。

 そのマルトレにて、近北公[ハエルヌン・ブランクーレ]が、百騎長以上の者を集めて、今の大公[スザレ・マウロ]に対して宣戦を告げる書状を読み上げた。

 これをもって、国主[ダイアネ・デウアルト五十五世]の詔書によるぼくは破られ、いくさがはじまった。

 このために、鳥籠[宮廷]は大いにその面目を失った。


 今の大公[スザレ・マウロ]は、声高に近北公の約定破りを言い立て、遠北州・東南州・東部州の三州へ檄を飛ばした。しかし、頼みの綱の遠北州が動けぬだけではなく、東南州と東部州が、消極的ながら近北公を支持する動きを見せたので、その驚愕は底がなかった。

 いつ間にか出来上がっていた、自分に対する包囲網に、今の大公は狼狽した。


 近北公は昨年末の上洛につづき、マルトレ[テモ・ムイレ・レセ]候に、糧秣の提供を命じた。

 その量は、民草から供出させなければまかなえないほどであったため、求められたマルトレ候に代わり、ウベラ・ガスムンが強固に反発し(後部は落丁のため、欠落)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る