第6話
「今日ね、買い物をしていたら、面白いものを見たの」
「へえ、何?」
「スーザンがね、ジェフを尾行していたの」
「へえ、それは……、なかなか面白い展開だね」
「そうなの。私は気付かれたら行けないからすぐに帰ったけれど、今頃どうなっているかしら……」
「ジェフの秘密は、まだバレていないんだよね?」
「ええ、そうね。でも、尾行していたってことは、彼に秘密があることに、スーザンも気付いたってことでしょう」
「ああ、そうだね。もうバレるのも、時間の問題ってことだ」
「そうなの。バレた時にどうなるか、楽しみだわ。あ、あんた、今日も泊っていくでしょう?」
「うん、そうするよ。なんだかここのところ、連日泊って姉さんの愚痴を聞いてばかりだね」
「いいでしょう、べつに。美味しいお酒と美味しい料理でもてなしてあげているじゃない」
「まあ、そうだね。もしかして、慰謝料をもらったから、高級な食材を買っているとか? だから、こんなに料理が美味しいの?」
「馬鹿言わないで。それは、私の料理の腕のおかげよ。……まあ、確かに、ほぉんの少しだけ、いつもより高い食材を使っているけれど。そんなの誤差の範囲だわ」
「ふぅん、誤差ねぇ。まあ、美味しければ何でもいいよ」
「身も蓋もないこと言わないでよ。それよりもあんた、なんか髪がペタッとしていない?」
「え、そうかな? さらさらとならしているけど。最近姉さんのシャンプーを使っているからかも」
「うーん、そういうのとも少し違うような。ちょっと失礼……」
「え……、な、何? なんで頭に顔を近づけるの!?」
「うわぁ、これは……」
「え……、人の頭皮のにおいを嗅いで、そのリアクションは酷くない? さすがの僕も傷つくよ?」
「いや、あんたこれ、シャンプーじゃなくて、間違えてリンスを使っているでしょう」
「……え、いや。さすがにそんな間抜けなことはしていないと思うけど……」
「だって、少し汗臭いわよ。リンスのにおいで何とか誤魔化せているけれど。シャンプーをしている時、何も気づかなかったの?」
「うーん、そういえば、全然泡立たなかったような……」
「全然泡立たないって、それ、確実にリンスでしょう!? 気付きなさいよ」
「いや、最近の高級志向のシャンプーは、泡立たないんだなぁって感心してた。髪もさらさらになるし」
「それは、リンスだからね。まったく……、早く風呂に入ってきなさい」
「えぇ、さっき入ったばかりなのに。まあ、しかたないか……」
「今度は間違えないでよ」
「大丈夫。奥にある方だよね?」
「手前にある方よ!」
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