第4話

 (※スーザン視点)


 私は現在、浮気の疑いがあるジェフをつけている。

 彼はこれから仕事のため、事務所へ行くはずだ。

 まさか、朝から浮気相手と密会なんてしていないとは思うけど……。


 しばらくはジェフのあとをつけていた。

 しかし、時間帯が良くなかった。

 この時間は仕事へ行く人が多いので、人ごみに紛れたジェフを見失ってしまった。


「もう、うまくいかないわね……」


 私は不満を呟いていた。

 しかし、チャンスは何度でもある。

 私は一度家に帰ることにした。

 また明日、彼が仕事へ行くのを見送ってからあとをつけよう。


 今度は、人ごみで見失わないように、距離を詰めてから尾行しよう。

 しかし、それではジェフに気付かれる可能性があるので、普段着ないような服やサングラスを帰りに買って、その服装で明日、彼を尾行するのがいいだろう。


 私はさっそく買い物をして、明日の準備をした。

 そして家に帰った時、あることに気付いた。

 昨日、ジェフがお昼ご飯を食べるために外にいたと言っていたが、あれは確実に嘘だ。

 今まではその可能性もあると疑っていた程度だったけど、今では確実に嘘だと断言できる。

 当然、その理由もある。


 ジェフは毎日、私が作った弁当を仕事へ持って行っているのだ。

 だから、外食するなんてことはありえない。

 どうして昨日気付かなかったのか。

 そのことが悔やまれる。

 今日彼が帰ってきたら、徹底的に問い質すことにしよう。


「ただいま」


 夜になって、ジェフが帰ってきた。

 私は意を決して、彼に尋ねた。


「ねえ、ジェフ。昨日あなたがお昼に外にいたのは、外食していたからって言っていたわよね?」


「ああ、そうだよ」


「それって、本当?」


「ああ、本当だよ。どうしたんだい? またその話をして。昨日君だって納得したじゃないか」


「ええ、そうよ。でもね、それは嘘だって気付いたの」


「いや、嘘じゃない。どうしてそんな風に思うんだい?」


「だって、あなたは、毎日私の作ったお弁当を持って行っているでしょう? それなのに、外食なんてありえないわ」


「あ……」


 ジェフは、言葉を失っているようだった。

 明らかに動揺している。


「本当はあの時、何をしていたの?」


「そ、それは……」


 ジェフは何か言葉を探している。

 しかしそれ自体が、昨日の言葉は嘘だという証拠だ。

 私は遂に、彼が隠し事をしていると確信した。

 しかし、ジェフの言葉によって、その考えは百八十度変わることになる。


「じ、実は、あの日は、お昼前に君の作った弁当を食べてしまったんだ。あまりに美味しそうだったから、我慢できなかったんだよ。そのあと、お昼になってお腹がすいたから、外食していたんだ」


「あら、そうだったの。ごめんなさい、私の早とちりだったわね」


 私の作ったお弁当が美味しそうで我慢できなかったなんて、なかなか嬉しいこと言ってくれるじゃない。

 食いしん坊なあなたも、とってもかわいいわよ。

 一時は疑ってしまったけど、やっぱり私はあなたのこと、愛しているわ。

 今まで彼を疑っていたせいでもやもやとした気持ちだったけど、それも綺麗に晴れた。

 

 そして迎えた翌日……。


「やっぱり、おかしいわ……」


 一晩経過して改めて冷静に考えてみると、やはりおかしい。

 だって、あの時のジェフは、明らかに動揺していたんだから。

 絶対に何か秘密がある。

 浮気だか何だか知らないけど、今日こそ暴いてやるわ。

 私は昨日買った服で変装して、ジェフの跡をつけた。


 そして、彼の知られざる一面を知ることになるのだった……。

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