第3話

 (※スーザン視点)


「いってらっしゃい、ジェフ」


「ああ、行ってくるよ」


 私はジェフにキスをして、仕事に行く彼を見送った。


「さて……」


 私はジェフのあとをこっそりとつけ始めた。

 理由は、昨日のことだ。

 彼は事務所で仕事をしていると聞いていたのに、昨日私が買い物をしていると、彼を遠目に見かけたのだ。

 すぐに声を掛けようと思ったが、人が多かったのでその時は見失ってしまった。

 

 彼が帰ってきてから、そのことを話すと、彼は明らかに動揺していた。


「え、えっと……、なんのことだろう? 僕は、ずっと事務所で働いていたよ。本当だ」


「いえ、あれは絶対にあなただったわ。見間違えるはずないもの。どうしてあんなところをうろついていたの?」


「そ、それは……」


 言葉に詰まっているジェフ。

 しかし、私はある考えが頭をよぎった。


「あ、もしかして、お昼休みだったから、外でご飯を食べた帰りだったとか?」


「そ、そう! そうだ! それだよ。昨日は確かにお昼は事務所では食べずに、外で食べていたよ。きっと君が見たのは、その時だね」


「ああ、そうだったのね。ごめんなさいね、変なこと聞いて」


「いや、気にすることないさ。疑われるようなことをした僕が悪いんだ」


 彼は笑顔で答えた。

 その優しい笑顔に、私はうっとりとしていた。


 しかし、翌日となった現在。

 冷静に考えてみると、やはりおかしい。

 あの時のジェフは、明らかに動揺していた。

 だから私は、彼のあとをつけているのだ。


 いったい、私に隠れてこそこそと何をしているのかしら。

 もしかして、浮気?


 もしそうだとしたら、その時は……。


    *


「姉さんも、彼のあの秘密を最初に知った時は、やっぱり驚いた?」


「それはもちろん驚いたわよ。だって、まさかね、あんな秘密があったなんて」


「最初は、浮気だと思ったんじゃない?」


「ええ、そうよ。まあ、違ったんだけれどね。でも、男がこそこそとしていたら、それはだいたい浮気なのよ」


「すごい偏見だね。隠れてサプライズを用意してくれているかも、とかは考えないの?」


「考えないわね。浮気現場を抑えて報いを受けさせてやる、くらいしか考えてなかったわ」


「ふうん、そういうものなんだ……。じゃあ、僕も彼女にサプライズする時は気をつけないと……」


「え、あんた、彼女いるの?」


「いや、いないけど。できた時の話だよ」


「なあんだ、紛らわしい言い方しないでよ。あんたも、さっさと彼女の一人くらい作りなさいよ。いつまで独り身でいるつもりなわけ?」


「いや、姉さんにだけは言われたくないよ」


「え?」


「あ、いや、なんでもないよ。あ、このお酒美味しいね……」

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