第2話
(※スーザン視点)
あれから、数週間が過ぎた。
ジェフとエルシーの婚約破棄は成立した。
そして、私とジェフは同棲し始めた。
毎日彼と一緒にいられるなんて、こんなに嬉しいことはない。
まさか、こんなに簡単にいくなんて思わなかった。
もう少しエルシーが粘って、無駄な抵抗をして苦しんでいる様を見たかったのに。
それにしても、彼とこの街で偶然出会えたことは、私にとって幸運だった。
彼とは幼馴染だけど、成人になってからはお互いに故郷を離れた。
しかし、数年経ってから、偶然この街で出会ったのだ。
昔話に花が咲き、気付けばお互いに惹かれ合っていた。
やはり、幼いころからお互いを知っている仲なので安心できる。
それは、エルシーにはない、幼馴染である私だけの特権だ。
ジェフを失って、今頃エルシーは一人で泣いているに違いないわ……。
*
「いやあ、まさか、あんなことになるなんて思わなかったわ」
テーブルの向かい側に座っている人物に、私は笑って話していた。
向かい側に座っている彼は、私の弟である。
婚約破棄の話を肴に、大人のブドウジュースを飲んでいる。
「姉さん、運がよかったね。婚約破棄に手間取りそうって言っていたのに、まさか奪ってくれる人が現れるなんてね」
「そうそう。全面的に向こうが悪いから、慰謝料だってもらえたし、婚約破棄の手続きも簡単だった。だから彼女には感謝しているの。幸せそうだったから、あのことは言わないであげたの」
「うわぁ、姉さん、あのこと言っていないの? まあ知っていたら、そのスーザンって人も、ジェフと幸せになろうなんて思わないよね」
「そうね。でも、いずれ知ることになるわ。その時になって、初めて気づくの。自分が奪った人物は、とんでもない秘密を抱えていたって。まあ、気付いた時には遅いんだけれどね」
「これから幸せになるって思っているのかもしれないけど、とんだ勘違いだね。まあ、人の婚約者を奪ったんだから、自業自得なんだけど」
「いったい、彼の秘密にいつ気付くのかしら?」
「あの二人が一緒に暮らし始めてから、一か月近くが経ったよね。そろそろ、最初の兆候に気付く頃なんじゃないかな?」
「そうね。私から婚約者を奪ったことを、心底後悔するに違いないわ……」
*
(※スーザン視点)
私はジェフと共に、幸せな生活を送る。
そのはずだった。
それなのに、彼を疑うことになるなんて。
彼には何か、秘密がある。
根拠もなくこんなことを思っているのではない。
彼が私に、ある嘘をついていることが発覚したからだ。
でも、二人の幸せな生活が始まったばかりだし、彼を問い質して幸せな環境を壊したくない。
それでも、疑わずにはいられない。
こんなこと考えたくないけど、もしかして私が奪った人って、完璧な人物なんかじゃないのかしら……。
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