3-20『本戦会場ー天高く聳え立つ塔』


 まぁ魂の抽出方法が分かったにしろ、どーせそれまではやる事ないので、2人には大会に出てもらう。

 大会に備えての修行の時間はあっという間に過ぎてゆき、本日は大会本戦である。


 当然訪れる冒険者ギルド。


「みぃちゃん!!みぅちゃん!!無理はしたらダメだよ!!ほんっとーーーに怪我しそうならリタイアしちゃったらいいんだからね!!絶対だよ!!」

(このお姉さんは相変わらず……大会よりも2人が優先なんだな~)


 ちなみに僕は相変わらず山の谷間に生えた3つ目の山となってます。(幸せだな~)


 本戦会場。


 予選会場と同じく転移魔法陣によってやってきた。

「にゅ?」「……?」

 2人が首を高くあげ不思議そうに見てるのも無理はない。

 大平原に天高く聳え立つ1本の塔……と思ったけど、10本ぐらい塔が突っ立ってるな。


 入口に書かれている。


 ゛下級冒険者゛


 なんか列になってる冒険者の最後尾に並んだ。


「はーい、受付です~冒険者カードをお願いしますね~」


「はい」「うみゅ」

 2人は受付に冒険者カードを手渡した。


「……!!まさか双子の英雄様!!予選での噂は聞きましたよ!!頑張ってください!!」


「ふぇ?」「はっはい?」

(双子の英雄って言われても、2人はわかんないだろうな)

 2人は握手してください!!とか言われ、よく分からないまま握手し会場へと入ってゆく。


「あ、お連れの方は……赤ん坊ですね、私が責任をもってお連れします」

 僕は攫われた。(塔の中が既に会場なのね?)


 受付の人に連れられて、僕は塔の裏にあるお知り合いの方席って場所に置かれた。

(…………赤ん坊をこんな椅子に座らせて去っていく世界ってどうなんだろ)

 疑問はあるが、どうやら塔の中はこの塔の裏に設置されたモニターで見れるみたいだな。


(人が邪魔で全然見えん!!)

 なので僕は結局、物理感知で中の様子を見る事にした。


 物理感知だと音声は拾えない……が、この受付で手渡された魔道具によって聞こえてくるので問題はなし。


 どうやら付き添い人にだけ配られる物のようで、みぅとみぃの首にかけられているネックレスと、僕が付ける2つのネックレスは同調してるそうだ。


(ふむ、心拍音が僅かに聞こえるのが……なんかあれだな)

 少しばかし悪い気するのは何故だろう。


 とっくとっくと小さな心臓音が時計の針のように一定周期で流れる中、外にまで聞こえるように実況が始まるようだ。


 ゛レディースー゛割愛する。


 惜しいとか思ってないが、毎度おなじみの言葉に少々嫌気がさしてきたのでね。


 という訳で、開催された。


 実況が言うには、この塔にいるメンバーの人数は62名、そして大会の優勝者は勿論1名である。

 そして内部は吹き抜けの螺旋階段のみがある塔には無数の魔物(下級)が解き放たれており、魔物を倒し見事頂上へ辿り着いたもの2名の勝利となるらしい。


 そして最後、残った2名による頂上での一騎打ち、勝てば優勝って感じ。

 まぁ冒険者としては確かに的をいている大会だと思う。



「にゅ?これなにするの?」


「1番上を早く着けばいいだけだってー」


 みんな勢いよく飛び出したというのに、この2人はなんだろうな。大会の趣旨をすぐに理解できないからってのんびりしすぎだとおもう。

 ちなみにトップはもう既に3分の1は制覇してるという状況。


 ゛あーーっと!!!ようやく大会らしくなってきたぁー!!1位の選手が脱落したようだぁーー!!!゛


 まぁ分かってたことだが、どれだけ早かろうが独走が許される程甘くはないんだろうな。

 トップを悠々と駆け上がっていた速いだけが取り柄っぽいやつ、ゴブリンの群れによる弓攻撃を受け足止めされたところ、背後にいた冒険者にぶっ飛ばされたようだな、真ん中の穴からすとーんと落ちて、べちゃっとみぅの横に落ちてきた。


 死んでないの?と思ったが、流石に予選程適当でもなく首についた音声を飛ばす魔道具が発動しみるみる身体は癒され、最後に転移魔法陣が作動、リタイアした人はそうやって転送されるようだな。


 とまぁ、そんな感じに戦いは結構過激になって行く、次々とリタイアさせられていく冒険者達、そんな最中2人は嬉しそうに会話していた。


「んーと、じゃあ競走?」


「うん、そういうことだよ?」


「1番なったらいくと褒めてくれるかな?」


「ご主人様ならなでなでしてくれると思うよ」


「……みぅ、頑張る!!」


「みぃも負けない!!」


 ようやくか……もう既に半数の冒険者はリタイアし、塔の中間を越えようとしている。

 けれどまぁ、所詮人間の足、野生動物の、それも家を軽々と超えるジャンプをする脚力に勝てる訳が無い。


 よーーい……どん!!と、僕が教えた掛け声と共に2人は走り出した。……いや、飛び出したかな。


 螺旋階段の意味が無い、みぅは真上へ飛燕撃を連続し一直線に空中を蹴り上がってゆく。

 対するみぃ、その場で待機してると思いきや魔力を練っていたようだな。

 ゛アクアウォール゛を足元に作り上げ、魔力によって足をそれに固定、そして更に唱える゛ウォーターガン゛ただ飛ぶだけならば水を操るだけでいいのだが、速度を与える為にまさかの自分を乗せたアクアウォールを玉にした力技。


「にゃにゃ!?みぃねぇねはやい!!……でも負けないもん!」


 簡単にみぅを追い越していくみぃ、けれどまたみぅも新しく考える。

「えと、魔撃を足で使えば飛燕撃だから~えへへ~」

 そうだね。うん。

 まぁ単純な話し、みぅは自分の足にダメージを受けない為に使ってなかった方法だな。魔力量も前とは違い格段に上がってるので問題ないのだろう。


「『魔炎撃!!』」

 脚からの放出、当たり前だけどそりゃ~炎が加われば速度は格段に上がる訳だな。


 一気にみぃに追い付く。


「みぅ!?……やっぱり速い」


「えへへ、みぃねぇねも凄いもん、でもこの速さが限界かな~」


 みぅも強くなったとはいえ、自分の連続して放出できる魔力量を把握してる。

 魔炎撃だけを放たず、飛燕撃をメインに速度と共に魔力も温存してるようだ。


 2人は呆気なく塔の頂上へ同着で登上した。


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