3-21『本戦会場ー壊滅』


 ゛ななな何が起きた~!!!気が付けば塔の頂上には既に双子の英雄が舞い上がっていたーー!!!!゛


 当然といえば当然の結末だろう。

 ぐるぐるとバカ広い塔の端を回る冒険者達、片や真っ直ぐ一直線に物凄い勢いで登っていった2匹、圧倒的な迄の差を有してみぅとみぃが勝つのは目に見えていたことだ。


 にしても、あの実況……本当に馬鹿だと思う。

 なにせ2匹が登ってる間、ぐるぐると走って邪魔し合い蹴落とし合う人間の汚い様を必死に実況してたんだからな。


 うちの2匹はその点、蹴落とすなんてことは考えないからこそ強いんだろう。

 真ん中を一気に駆け上がる、ほかの冒険者も考えただろうこの方法、攻撃される事を恐れて誰もしなかったんだと思う。


 とはいえ、勿論だが2匹が登っている時ほかの冒険者は攻撃しようとしていた。

 けれど早すぎたんだよなぁ……2匹は魔力を練る時間も弓を構える間も与えずあっという間に通り過ぎたんだから攻撃をする事が出来なかったんだ。


 頂上についた2人。


「みぅ、みぃと勝負だよ?」


「にゅ?みぃねぇねと遊ぶの?」


「うん、全力で勝った方がご主人様に褒めてもらえるの」


「にゃにゃ……じゃあ本気で勝つもん!!」


 向かい合う2匹、お互いに誓いのネックレスを交換する。

 これが意味することは、お互いがお互いに攻撃し合う事が可能ということだな。

 まぁ僕は思うんだ……遊びで済めばいいけど……


 ゛そう、そうだったぁーー!!塔に登った2人は戦う宿命!!まさかまさかの双子の英雄が争うこととなったぁーー!!゛


 この実況、あとでぶっ飛ばす。

 何が争うだ、これは2匹のじゃれ合い……人間と2匹を一緒にしないでもらいたい。


「みぃねぇね?魔力は練れた?」


「うん、とっくに準備できてるよ!」


 ほらな、人間ならば魔力を練ってるとか反則だーとかあーだこーだ言うだろうに、むしろ最善をお互いが尽くす様に戦う相手への気遣い、どう考えても争いなんかじゃない。


「じゃあ……」


「うん……」


「「よーーーーい……どん!!!!」」

 2人は同時に声を上げる。二人のじゃれ合いは始まる。


 よーいどんという合図に似合った行動を取るのはみぅ、地面が吹き飛ぶ程の飛燕撃を行い見えない速度でみぃに突撃する。


 あの王級の老人を倒した時もこれ程の全力ではなかったというのに、それ程までにみぅから見たみぃは強いんだろう。


 お互いを高めあってきた2人、当然その行動は読まれている。


「『アクアウォール……ウォーターガン!!』」


 二重魔法、アクアウォールを球体で作りあげ一直線に飛んでくるみぅに向かって放つ。

 もちろんただの大きな水の球ではない。上級魔法ウォーターバーンと同じく圧縮された水の塊、更にそれに速度を乗せたものだ。


「『飛燕撃!!』」もちろんだが、みぅもそれぐらいお見通し、真っ直ぐ飛ぶ自身の身体を地面を蹴り上空へ蹴りあげた。


「みぅ?前だよ」


「にゃにゃ!!??」


 けれどやはりというか、計算勝負ならみぃの圧勝だな。

 どうやらわざと巨大に作ったウォーターガンだったようで、その後ろから斜め上、左右斜めに向かう様に、合計4つの玉をみぅからは見えないよう並べて放っていたようだ。


 当然直撃。


 とはさせないみぅ「『魔炎撃!!』」

 圧縮された水が吹き飛び蒸発する。


 けれど恐ろしいのはみぃ、それすら予知して残りのみぅの動きとは違う方面に飛んでた水の玉を操り、既にみぅを囲うように襲撃させている。


「にゃにゃ!!」

 まぁ結局みぃの手動の速度程度だとみぅには追いつくことは不可能だろう。みぅもそれを瞬時に判断し「『飛燕撃!!』」真っ直ぐ唯一空いたみぃへの道を突き進む。


「『破!!!』」

「ふぇ!?」とまぁ、みぃはそんなことも分かってるように、みぅの背後でその一つ一つが数トンもある水の塊を破裂させた。

 完全に避けきれず、みぅは吹き飛ばされる。


 ゛…………………………ついていけなーーい!!!何だこの戦いわ~!!強い……いや、化け物すぎる!!゛


 吹き飛んだみぅ、完全に上体を失い地面へ一直線に吹き飛ぶ。

 流石のみぅもここから体勢を立て直し飛燕撃でこの衝撃を和らげることは不可能だろう。


 とまぁ普通ならここで戦いがおわるのだがな。


「『アクアウォール!!』」

 ばっしゃーーんと水しぶきが高く舞い上がる。

 ぶくぶくぶく~と沈み、そしてそのまま泳いでアクアウォールから抜け出すのはみぅである。


「むむぅ~またみぃねぇねに負けた~」


「えへへ、みぅのお姉ちゃんだからね負けてられないよ?」


 みぃがみぅを傷つける訳はない。水のクッションを敷いてみぅに与えるダメージを無くしたようだな。


 そんな調子でいつまでも続くじゃれ合いなんだが、僕はもう見慣れてて……それがどんなもんかはよく知ってるんだ。


 ゛……天高く聳え立つ塔が……崩壊……!?というより、瓦礫になっただとーーーー!?゛


 うん。知ってたんだ。


 結局勝敗はつくことはなく、この後ギルド大会の人が2人を止めに入った。


 ……なんせ、いつまでも続く二人のじゃれ合いに、その辺一帯が荒野になりそうになったんだからな。

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