3-18『終焉の牢獄ー制約と契約』


 とりあえず今の所分かったこと。


 魔王の魂を抜く方法がある。


 魔王の魂を抜くのには設備が必要となる。


 この老人はみぃとみぅがその器だと知らない。


 そしてまぁ、この老人を殺す訳には行かなくなったってことだ。


「んーと、魂を抜くのにお前は必要な存在なのか?」

「……そうじゃな、儂しかその方法を知らぬからの」


 みぃとみぅの成長を待つ方法もあるが、今回の大会で分かったこと……2人がかつての魔王と勇者を超える日なんて訪れるのか?ってことなんだよな。


 確かに成長は著しく、化け物みたいに見えない事はないが……それでも今のまま強くなって行ったとして、あと10年……いや20年はかかるだろうし、成長限界ってのは誰しもあり、2人の限界が勇者と魔王以下だと話しにならない。


 それに、2人には時間はそんなにない。


(魔王と勇者の魂が2人の魂を乗っ取る前にってなれば、あのねこのこ様の言い方からして時間がほとんどないだろうな、みぃが怒った時に1度だけ見せた闇の魔力、どっちのものかは分からないが……あれはたぶん、侵食の一端だとも見れる……それに)


 後もうひとつ、理由がある。


(あいつらが母親を子供として抱きしめられる期間は子供の間だけだもんな、20年も経っちまえばあの2人に子供らしい感情があるかなんてわからない……)


 2人の成長は不思議と僕を高揚させる。が、それと同時に心を締め付ける。

 2人の成長を1番見たいのはきっと母親で、2人は僕にうれしそうに見せ付けるがそれは1番見せたい人が居ないからと分かってしまうから、僕はできる限りはやい段階で2人を解放させてあげたいんだ。


 だから現段階でこの老人は絶対に殺せない。


「最後に質問だ。お前の言うその魔王の魂を取り出す方法だと、魔王の魂を持った者に危害が及ぶことは無いのか?」


「ああ、ないよ」「分かった」


 つまり現状、僕とこの老人の利害は一致したという事になるな。


 僕は魂の抽出方法を知りたい。


 そしてこの老人は魂を抽出したい。


 まぁ魔王とやらは確実に復活するだろうが、そんなものは僕の知ったことではない。

 世界が滅ぶ?知らん、魔王が僕の生活圏内にさえ踏み入らない約束を交わすのであれば倒す必要も無い。


「ひとつ提案がある」

 僕は老人に提案を持ちかける。



 1、確実に魔王の魂を抽出させること、そして更にもう1つの魂を抽出させること、その際器に対して一切の危害を加えない事


 2、僕は2人に危害が及ぶ心配が無い限り、一切魔王の配下には手を出さない。


 3、魔王が復活した際、アース大陸には足を踏み入れないという事、そしてねこのこ族に対してはアース大陸以外でも絶対に手を出さないこと。


 4、魔王が復活した際、そのルールを犯さない限り僕は魔王に手を出さないこと


 5、以上4つの提案を呑むことで、僕は全力で魂の抽出を手伝うということ


 これが僕が老人に持ち掛けた提案、そしてこれを呑まなければこいつを生かしておいても害があるだけなので、今この場で殺す。


「……ふむ、断る事は出来そうにないな、この約束を破らないという保証はどうするのじゃ?」

 まぁ言ってくると思った。確かに口約束なんて嘘発見器があってもあとあと心変わりで2人に危害を加えるかもしれないからな?


「魔法による契約だ、さっき言ったことを制約にし、破った方にはそれ相応の罰を下すようにするってのはどうだ?」


「……ほう、だがお主程の者であれば破棄など容易いのではないか?」

 この老人、やっぱそれなりの場数を踏んでるだけに、隙を作らないなー(んー2人から魂が抜けるなり魔法契約を消し去ろうと思ったんだがなー……はぁ)


「なら6、強制的な契約の解除は、契約の解除後を問わず罰を執行するものとするってのはどうだ?」

(これだと流石に僕も狡の仕様が無いな~)


「分かった、その話し乗ろうでは無いか」


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