2-27『東の街道ー2対の龍』
とりあえず、この2人は僕の指令を待っている。
(んーただ全滅させるって言うにはな~)
ちなみにあの先輩方だけど、3人合わせればみぅとみぃより総合計やや強いと思う。
それをいとも簡単に仕留めた相手達を前に、なぜ僕が余裕なのかと言えば……まぁ結局、みぅとみぃに任せれば余裕そうだからだ。
なので指令を下す。「全員殺さずに倒せ」
「うみゅ!」「はい!!」
実際これってかなり難しい事なんだが、この2人は僕が言う指令を前もって予想してたな?嬉しそうに顔を合わせてやがるよ。
あ、ちなみにだけど僕は一切手助けはしない。
敵は僕たちの存在に気付いてるが、全然手を打つことも無く無視をしていた。
それは完全に舐めてる証拠で、この馬車に乗ってる中で1番熟練そうな冒険者を殺し捉えた今は1番油断している時だ。
なんの躊躇いもなく、みぅは一直線に1番大きな槍を持った盗賊目掛け飛んでいた。
「ナイトの鎧ごと突き刺し貫通させたやつか」
本来ならば遠距離系などが危険なので真っ先に潰すのを敢えてそこに絞ったのは、この2人が今学習した結果だろう。
気付いたのは多分、みぅがもう目と鼻の先に入った時、無駄に長い槍の最も弱い近距離、気付き焦り振り上げたのが運の尽き。
その勢いのまま蹴りを入れたあと、更に追撃する。
大男を蹴り、くるりとジャンプし前に着地、そして踏みとどまった大男へ深々と踏み込み拳を突きつける。
「『魔炎撃!!にゃ!!』」最後のにゃ!は必要ないと思うが、余裕があったからつい嬉しくて言ったんだろうな。
仲間が気付きみぅに向けてナイフを投げた時には、大男の腹をぶち抜いたみぅはとっくに下がっている。
「おかしらー!!!」そして駆け寄る者と現状を理解出来ず固まる者、それをさっき学んだんだな。
(一応あとで、1番大きいのが倒れたから集まるんじゃないぞーとだけ教えないとな~)多分人間の心理を勘違いしてそうだしな。
でも今回は項を為した。どうやらおかしらと呼ばれてたし、あれが盗賊のボスだったようだ。
次に下がってたみぅなのだが、既に場の状況を見切り、次の場所に移っていた。
「えへへ~」戦闘中だというのに、相手が感情のある人だからか焦る様子を楽しんでるんだな。
みぅは大きな盾、魔道具の上に立っていて、その後ろで待機する魔道士2人にニコッと笑いかけている。
(美少女の笑み程怖いものは無いと言うが、まさにそれだな)
「うわぁーー!!!」「きゃーーー!!!」
大声を上げて2人は逃げていったようだ。
「むむぅ~」(あっちょっと傷付いてる)
とはいえ、みぅの仕事はここまでの様だな。
ひょいっと2人がかりで持ってたような盾をひょいっと持ち上げ、ぴょーんと僕達の元へ戻ってきた。
「いくと~~」飛んだ勢いで外れるフードも計算か?頭を僕の方に向け盾を僕の横に置くみぅである。
「よしよし」「みぅ頑張った~」「だが残念、まだみぅの仕事残ってないか?」「ふぇ?……あっ!!」「まぁでも、別に死にはしないだろうし……みぃ、いいぞ~やっちゃえ!」
「はい!!」
みぃはみぅに任せ魔力をどこまでも練り続け待機していた。
だから今も待機してたのだが、僕の言葉は最優先みたいだな。
こうなれば、みぅが忘れてきた女の冒険者の事などお構い無しだ。容赦なく魔法を唱える。
「『水よ、二対の水龍となりて全ての敵を押し潰せ!!』」
(こないだ僕が日本語に訳した物語がお気に入りだもんな)
あ、最近みぃに見せてる本の事だ、どうしても漢字を教えられても僕の知る幻想の存在を教えるのは難しいからな。
異世界にある絵本、あれを僕の世界の文字に書き直してみぃに読ませてる。だから……この世界に存在しないであろう形の、これが出現するんだろうな。
みぃの広げる両腕の手の先から現れる2つの魔法陣、みぅが引き付けてる間に練った魔力によって、大量の水を召喚している。
そして水は地面に落ちることはなく、一滴残らずその身を僕の世界に幻想として存在する龍に模して姿を変える。
「ん、上出来だな」
僕がつい零すと、嬉しいのか少し耳がぴくぴくっと動くが表情は真剣そのもの。少しの油断も出来ない操作が必要なんだろうな。
そしてそれだけ大変な魔法、もちろん威力は物凄い。
(……僕でもあそこまで操れる気がしないのだが?)
直接当てれば当然殺す事は分かりきってるのか、水が増せば増すほどに長く巨大になる水の龍を操り、当てること無く盗賊達に掠らせその身体に流れる水圧のみで気絶させていった。
(……んーこんな魔法出さなくても、みぃなら全員の後頭部に氷なりぶつけて気絶させられそうだけどな……ぼくにみてほしかったのかぁ)
こういうとこ、本当にみぃは可愛いと思う。
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